まなづるとダァリヤ 3/4 宮沢賢治
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問題文
(よがあけかかり、そのききょういろのうすあかりのなかで、)
夜があけかかり、そのききょう色のうすあかりのなかで、
(きいろなだぁりやは、あかいはなをちょっとみましたが、)
黄色なダァリヤは、赤い花をちょっと見ましたが、
(きゅうに、なにかこわそうにかおをみあわせてしまって、)
きゅうに、なにかこわそうに顔を見あわせてしまって、
(ひとことも、ものをいいませんでした。)
ひとことも、ものをいいませんでした。
(あかいだぁりやがさけびました。)
赤いダァリヤがさけびました。
(「ほんとうに、いらいらするってないわ。)
「ほんとうに、いらいらするってないわ。
(けさはあたしは、どんなにみえているの。」)
けさはあたしは、どんなに見えているの。」
(ひとつのきいろのだぁりやが、)
ひとつの黄色のダァリヤが、
(おずおずしながらいいました。)
おずおずしながらいいました。
(「きっと、まっかなんでしょうね。)
「きっと、まっかなんでしょうね。
(だけどあたしらには、まえのようにあかくみえないわ。」)
だけどあたしらには、まえのように赤く見えないわ。」
(「どうみえるの。いってください。どうみえるの。」)
「どう見えるの。いってください。どう見えるの。」
(もひとつのきいろなだぁりやが、もじもじしながらいいました。)
もひとつの黄色なダァリヤが、もじもじしながらいいました。
(「あたしたちにだけ、そうみえるのよ。)
「あたしたちにだけ、そう見えるのよ。
(ね。きにかけないでくださいね。)
ね。気にかけないでくださいね。
(あたしたちには、なんだかあなたに、)
あたしたちには、なんだかあなたに、
(くろいぶちぶちができたようにみえますわ。」)
黒いぶちぶちができたように見えますわ。」
(「あらっ。よしてくださいよ。えんぎでもないわ。」)
「あらっ。よしてくださいよ。えんぎでもないわ。」
(たいようはいちにちかがやきましたので、おかのりんごのはんぶんは、)
太陽は一日かがやきましたので、丘のりんごの半分は、
(つやつやあかくなりました。)
つやつや赤くなりました。
(そしてはくめいがふり、たそがれがこめ、)
そして薄明がふり、たそがれがこめ、
(それからよるがきました。まなづるが、)
それから夜がきました。まなづるが、
(「ぴーとりり、ぴーとりり。」とないて、そらをとおりました。)
「ピートリリ、ピートリリ。」と鳴いて、空をとおりました。
(「まなづるさん。こんばんは、あたしみえる?」)
「まなづるさん。こんばんは、あたし見える?」
(「さよう。むずかしいですね。」)
「さよう。むずかしいですね。」
(まなづるは、あわただしくぬまのほうへとんでいきながら、)
まなづるは、あわただしく沼のほうへ飛んでいきながら、
(しろいだぁりやにいいました。)
白いダァリヤにいいました。
(「こんばんはすこしあたたかですね。」)
「こんばんはすこしあたたかですね。」