野生の同盟

(あいさつのないてがみをかきそんじたまま)

挨拶のない手紙を書き損じたまま

(だいじにしたいおりめがかさばっていく)

大事にしたい折目が嵩張っていく

(ないまぜのねんぼくはうめつくしたものの)

綯い交ぜの念僕は埋め尽くしたものの

(あいかわらずきみへおくれずじまい)

相変わらず君へ送れず仕舞い

(ふしだらなせかいをぬってひきあうように)

ふしだらな世界を縫って引き合うように

(ふたりはやせいをゆうしている)

ふたりは野性を有している

(ねえどうしていまあえないでいるかを)

ねえ如何して今会えないでいるかを

(おしえてほしいよこえがききたいよ)

教えて欲しいよ声が聴きたいよ

(しっていたんだまえにいっていたね)

知っていたんだ前に云っていたね

(きみにとってはちんもくだけがただしいと)

君にとっては沈黙だけが正しいと

(さいしょのであいはるかあきぞらをおもいかえせば)

最初の出会い遥か秋空を思い返せば

(ないしょのねがいもじきかたづいていく)

内緒の願いもじき片付いていく

(わかたれたみらいのきょうがわりだすかこ)

分かたれた未来の今日が割り出す過去

(ひとりじゃやせいをなくしそう)

ひとりじゃ野性を無くしそう

(ねえどうしていまあいたくなったかを)

ねえ如何して今会いたくなったかを

(かんがえてほしいよかおがおがみたいよ)

考えて欲しいよ顔が拝みたいよ

(おぼえているちょっとないていたね)

憶えているちょっと泣いていたね

(ぼくにとってもちんもくだけはただしくて)

僕にとっても沈黙だけは正しくて

(しんそうなんていつだってものおとひとつしない)

真相なんて何時だって物音一つしない

(しじまいってんにやどっているんだ)

しじま一点に宿っているんだ

(そういきているというぜつぼうこそが)

そう「生きている」と言う絶望こそが

(きみとぼくとをゆわえているやせい)

君と僕とを結わえている野性

(さあかつてのしょうねんしょうじょらは)

さあかつての少年少女等は

(ぶあついへつらいをきこんでいるころでしょう)

分厚い諂いを着込んでいるころでしょう

(ああひえてきたおもいだしてしまうのは)

ああ冷えて来た思い出してしまうのは

(きみのむごんのといきのしろさいさぎよさ)

君の無言の吐息の白さ／潔さ