表現者たち

(ちんもくをたてにせきばらい)

沈黙を盾に咳払い

(なぐさみにかいてはけすばかり)

慰みに書いては消すばかり

(だれにきいたるさんちまんを)

誰に聞いたルサンチマンを

(かさにきてわらわせやがる)

笠に着て笑わせやがる

(あてどもとめどもないせんじょう)

当て所も止め処もない戦場

(ろくじょうひとまにありふれた)

六畳一間に有り触れた

(ゆめやくらしやあこがれなどが)

夢や暮らしや憧れなどが

(ゆみをひいてじゃましやがる)

弓を引いて邪魔しやがる

(ふりかざすてににぎった)

振り翳す手に握った

(ふでをおることもなく)

筆を折ることもなく

(いじをふりしぼってひくせんを)

意地を振り絞って引く線を

(いくじなしがにげみちにする)

意気地無しが逃げ道にする

(きでもふれてしまえたら)

気でも触れてしまえたら

(いっそらくだったろうにね)

いっそ楽だったろうにね

(こころではみたされない)

心では満たされない

(はらがせいかつをえらぶ)

腹が生活を選ぶ

(うれないえをかざりだした)

売れない絵を飾り出した

(へやにいばしょはないけど)

部屋に居場所はないけど

(あぶらえのぐのにおいと)

油絵の具の匂いと

(ぼろぼろのいーぜるはすき)

ボロボロのイーゼルは好き

(ちでもうりはらえるならば)

血でも売り払えるならば

(ぜんぶおかねにしてほしい)

全部お金にして欲しい

(わたしうたしかないのよ)

私　歌しかないのよ

(なんてことばむなしいだけ)

なんて言葉　虚しいだけ

(びんぞこのゆうきりんを)

ビン底の有機リンを

(ながしこんだくるいみず)

流し込んだ狂い水

(なわをにぎりあうような)

縄を握り合うような

(なまぬるいしのにおい)

生温い死の臭い

(おねがい！わたしをころして)

お願い！私を殺して

(にどもおいていかないで)

二度も置いて行かないで

(ただしいとかえやうたなんて)

正しいとか絵や歌なんて

(ぜんぶどうでもいいから)

全部どうでもいいから

(かきかけのぽーとれいと)

描きかけのポートレイト

(いつもどおりのうれいがお)

いつも通りの憂い顔

(ちからなくほほえんでいた)

力なく微笑んでいた

(あなたとわたしのれんさく)

あなたと私の連作

(もしもここでたおれても)

もしもここで倒れても

(だれもきずをなめないで！)

誰も傷を舐めないで！

(くりかえしたいのちがけが)

繰り返した命懸けが

(いのちごいにみえてしまうわ)

命乞いに見えてしまうわ