紫式部 源氏物語 桐壺 5 與謝野晶子訳

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1 HAKU 7044 7.3 95.8% 615.8 4534 196 66 2024/05/13
2 ヤス 6993 S++ 7.3 95.1% 615.1 4531 229 66 2024/05/09
3 □「いいね」する 6630 S+ 6.8 96.4% 658.9 4537 168 66 2024/05/08
4 miko 5816 A+ 5.9 97.2% 755.8 4523 127 66 2024/05/11
5 りく 5629 A 5.7 97.7% 799.7 4609 107 66 2024/05/13

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問題文

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(わかいにょうぼうたちのこういのしをかなしむのはむろんであるが、きゅうちゅうずまいを)

若い女房たちの更衣の死を悲しむのはむろんであるが、宮中住まいを

(しなれていて、さびしくものたらずおもわれることがおおく、おやさしいみかどのごようすを)

しなれていて、寂しく物足らず思われることが多く、お優しい帝の御様子を

(おもったりして、わかみやがはやくごしょへおかえりになるようにとうながすのであるが、)

思ったりして、若宮が早く御所へお帰りになるようにと促すのであるが、

(ふこうなじぶんがごいっしょにあがっていることも、またせけんにひなんのざいりょうを)

不幸な自分がごいっしょに上がっていることも、また世間に批難の材料を

(あたえるようなものであろうし、またそれかといってわかみやとおわかれしている)

与えるようなものであろうし、またそれかといって若宮とお別れしている

(くつうにもたえきれるじしんがないとみぼうじんはおもうので、けっきょくわかみやのきゅうちゅういりは)

苦痛にも耐えきれる自信がないと未亡人は思うので、結局若宮の宮中入りは

(じっこうせいにとぼしかった。 ごしょへかえったみょうぶは、まだよいのままでごしんしつへはいって)

実効性に乏しかった。 御所へ帰った命婦は、まだ宵のままで御寝室へはいって

(おいでにならないみかどをきのどくにおもった。なかにわのあきのはなのさかりなのをあいして)

おいでにならない帝を気の毒に思った。中庭の秋の花の盛りなのを愛して

(いらっしゃるふうをあそばしてぼんようでないにょうぼうし、ごにんをおそばにおいて)

いらっしゃるふうをあそばして凡庸でない女房四、五人をおそばに置いて

(はなしをしておいでになるのであった。このごろしじゅうみかどのごらんになるものは、)

話をしておいでになるのであった。このごろ始終帝の御覧になるものは、

(げんそうこうていとようきひのこいをだいざいにしたはくらくてんのちょうごんかを、ていしいんがえに)

玄宗皇帝と楊貴妃の恋を題材にした白楽天の長恨歌を、亭子院が絵に

(あそばして、いせやつらゆきにうたをおよませになったまきもので、そのほか)

あそばして、伊勢や貫之に歌をお詠ませになった巻き物で、そのほか

(にほんぶんがくでも、しなのでも、あいじんにわかれたひとのかなしみがうたわれたものばかりを)

日本文学でも、支那のでも、愛人に別れた人の悲しみが歌われたものばかりを

(みかどはおよみになった。みかどはみょうぶにこまごまとだいなごんけのようすをおききになった。)

帝はお読みになった。帝は命婦にこまごまと大納言家の様子をお聞きになった。

(みにしむおもいをえてきたことをみょうぶはそとへこえをはばかりながらもうしあげた。)

身にしむ思いを得て来たことを命婦は外へ声をはばかりながら申し上げた。

(みぼうじんのごへんじをみかどはごらんになる。 もったいなさをどうしまつして)

未亡人の御返事を帝は御覧になる。 もったいなさをどう始末して

(よろしゅうございますやら。こうしたおおせをうけたまわりましてもおろかものはただ)

よろしゅうございますやら。こうした仰せを承りましても愚か者はただ

(かなしいかなしいとばかりおもわれるのでございます。 )

悲しい悲しいとばかり思われるのでございます。

(あらきかぜふせぎしかげのかれしよりこはぎがうえぞしづこころなき )

荒き風防ぎし蔭の枯れしより小萩が上ぞしづ心無き

(というような、うたのかちのうたがわしいようなものもかかれてあるが、かなしみの)

というような、歌の価値の疑わしいようなものも書かれてあるが、悲しみの

など

(ためにおちつかないこころでよんでいるのであるからとかんだいにごらんになった。)

ために落ち着かない心で詠んでいるのであるからと寛大に御覧になった。

(みかどはあるていどまではおさえていねばならぬかなしみであるとおぼしめすが、)

帝はある程度まではおさえていねばならぬ悲しみであると思召すが、

(それがごこんなんであるらしい。はじめてきりつぼのこういのあがってきたころの)

それが御困難であるらしい。はじめて桐壺の更衣の上って来たころの

(ことなどまでがおこころのひょうめんにうかびあがってきてはいっそうくらいかなしみにみかどを)

ことなどまでがお心の表面に浮かびあがってきてはいっそう暗い悲しみに帝を

(おさそいした。そのとうじしばらくわかれているということさえもじぶんには)

お誘いした。その当時しばらく別れているということさえも自分には

(つらかったのに、こうしてひとりでもいきていられるものであるとおもうと)

つらかったのに、こうして一人でも生きていられるものであると思うと

(じぶんはいつわりもののようなきがするともみかどはおおもいになった。 「しんだだいなごんの)

自分は偽り者のような気がするとも帝はお思いになった。 「死んだ大納言の

(ゆいごんをくろうしてじっこうしたみぼうじんへのむくいは、こういをこうきゅうのいちだんたかいいちに)

遺言を苦労して実行した未亡人への酬いは、更衣を後宮の一段高い位置に

(すえることだ、そうしたいとじぶんはいつもおもっていたが、なにもかもみなゆめに)

すえることだ、そうしたいと自分はいつも思っていたが、何もかも皆夢に

(なった」 とおいいになって、みぼうじんにかぎりないどうじょうをしておいでになった。)

なった」 とお言いになって、未亡人に限りない同情をしておいでになった。

(「しかし、あのひとはいなくてもわかみやがてんしにでもなるひがくれば、こじんにきさきの)

「しかし、あの人はいなくても若宮が天子にでもなる日が来れば、故人に妃の

(くらいをおくることもできる。それまでいきていたいとあのふじんはおもっているだろう」)

位を贈ることもできる。それまで生きていたいとあの夫人は思っているだろう」

(などというおおせがあった。みょうぶはおくられたものをおまえへならべた。これがからの)

などという仰せがあった。命婦は贈られた物を御前へ並べた。これが唐の

(げんじゅつしがたかいのようきひにあってえてきたたまのかざしであったらと、みかどは)

幻術師が他界の楊貴妃に逢って得て来た玉の簪であったらと、帝は

(かいないこともおおもいになった。 )

かいないこともお思いになった。

(たずねいくまぼろしもがなつてにてもたまのありかをそことしるべく )

尋ね行くまぼろしもがなつてにても魂のありかをそこと知るべく

(えでみるようきひはどんなにめいしゅのかいたものでも、えにおけるひょうげんはかぎりが)

絵で見る楊貴妃はどんなに名手の描いたものでも、絵における表現は限りが

(あって、それほどのすぐれたかおももっていない。たいえきのいけのれんげにも、)

あって、それほどのすぐれた顔も持っていない。太液の池の蓮華にも、

(びおうきゅうのやなぎのおもむきにもそのひとはにていたであろうが、またからのふくそうはかびでは)

未央宮の柳の趣にもその人は似ていたであろうが、また唐の服装は華美では

(あったであろうが、こういのもったやわらかいび、えんなしたいをそれにおもいくらべて)

あったであろうが、更衣の持った柔らかい美、艶な姿態をそれに思い比べて

(ごらんになると、これははなのいろにもとりのこえにもたとえられぬさいじょうのものであった。)

御覧になると、これは花の色にも鳥の声にもたとえられぬ最上のものであった。

(おふたりのあいだはいつも、てんにあってはひよくのとり、ちにうまれればれんりのえだ)

お二人の間はいつも、天に在っては比翼の鳥、地に生まれれば連理の枝

(ということばでえいきゅうのあいをちかっておいでになったが、うんめいはそのひとりにはやくしを)

という言葉で永久の愛を誓っておいでになったが、運命はその一人に早く死を

(あたえてしまった。あきかぜのねにもむしのこえにもみかどがかなしみをおぼえておいでになるとき、)

与えてしまった。秋風の音にも虫の声にも帝が悲しみを覚えておいでになる時、

(こきでんのにょごはもうひさしくよるのおとどのとのいにもおあがりせずにいて、)

弘徽殿の女御はもう久しく夜の御殿の宿直にもお上がりせずにいて、

(こんやのげつめいにふけるまでそのおとどでおんがくのがっそうをさせているのをみかどはふゆかいに)

今夜の月明に更けるまでその御殿で音楽の合奏をさせているのを帝は不愉快に

(おぼしめした。このころのみかどのおこころもちをよくしっているてんじょうやくにんやみかどづきの)

思召した。このころの帝のお心持ちをよく知っている殿上役人や帝付きの

(にょうぼうなどもみなこきでんのがくおんにはんかんをもった。まけぎらいなせいしつのひとで)

女房なども皆弘徽殿の楽音に反感を持った。負けぎらいな性質の人で

(こういのしなどはがんちゅうにないというふうをわざとみせているのであった。)

更衣の死などは眼中にないというふうをわざと見せているのであった。

(つきもおちてしまった。 )

月も落ちてしまった。

(くものうえもなみだにくるるあきのつきいかですむらんあさぢうのやど )

雲の上も涙にくるる秋の月いかですむらん浅茅生の宿

(みょうぶがごほうこくしたこじんのいえのことをなおみかどはそうぞうあそばしながらおきて)

命婦がご報告した故人の家のことをなお帝は想像あそばしながら起きて

(おいでになった。 うこんえふのしかんがとのいもののなをひろうするのをもってすれば)

おいでになった。 右近衛府の士官が宿直者の名を披露するのをもってすれば

(ごぜんにじになったのであろう。ひとめをおはばかりになってごしんしつへおはいりに)

午前二時になったのであろう。人目をおはばかりになって御寝室へおはいりに

(なってからもあんみんをえたもうことはできなかった。 あさのおめざめにもまた、)

なってからも安眠を得たもうことはできなかった。 朝のお目ざめにもまた、

(よあけもしらずにかたりあったむかしのごついおくがおこころをしめて、ちょうきのあったひも)

夜明けも知らずに語り合った昔の御追憶がお心を占めて、寵姫のあった日も

(ないのちもあさのせいむはおおこたりになることになる。おしょくよくもない。かんたんなごちょうしょくは)

亡いのちも朝の政務はお怠りになることになる。お食欲もない。簡単な御朝食は

(しるしだけおとりになるが、ていおうのごちょうさんとしてよういされただいしょうじの)

しるしだけお取りになるが、帝王の御朝餐として用意された大床子の

(おりょうりなどはめしあがらないものになっていた。それにはてんじょうやくにんのおきゅうじが)

お料理などは召し上がらないものになっていた。それには殿上役人のお給仕が

(つくのであるが、それらのひとはみなこのじょうたいをなげいていた。すべてそっきんするひとは)

つくのであるが、それらの人は皆この状態を嘆いていた。すべて側近する人は

(だんじょのべつなしにこまったことであるとなげいた。よくよくふかいぜんしょうのごえんで、)

男女の別なしに困ったことであると嘆いた。よくよく深い前生の御縁で、

(そのとうじはよのひなんもこうきゅうのうらみのこえもおみみにはとどまらず、そのひとにかんする)

その当時は世の批難も後宮の恨みの声もお耳には留まらず、その人に関する

(ことだけはただしいはんだんをうしなっておしまいになり、またしんだあとではこうして)

ことだけは正しい判断を失っておしまいになり、また死んだあとではこうして

(かなしみにしずんでおいでになってせいむもなにもおかえりみにならない、こっかのために)

悲しみに沈んでおいでになって政務も何もお顧みにならない、国家のために

(よろしくないことであるといって、しなのれきちょうのれいまでもひきだして)

よろしくないことであるといって、支那の歴朝の例までも引き出して

(いうひともあった。)

言う人もあった。

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