あめふり婦人

(まちがびしゃびしゃぬれるよるまでは)

街がびしゃびしゃ濡れる夜までは

(たしかにこえであふれていた)

確かに声で溢れていた

(いまではおよそたえがたいくらいの)

今ではおよそ耐え難いくらいの

(しずけさたちがここにいた)

静けさ達がここに居た

(ふそんなこころばかりつよくなる)

不遜な心ばかり強くなる

(わたしにあいをくださいな)

私に愛をくださいな

(いっとうかさねてはじけるうたかた)

いっとう重ねて弾ける泡沫

(さびしくなってどうしようもない)

さびしくなってどうしようもない

(まっかなふえのねはしゃぐこどもたち)

真赤な笛の音はしゃぐ子供たち

(とおくのほうへいくようだ)

遠くのほうへ行くようだ

(にわかにあめがふりだすみたいに)

俄かに雨が降り出すみたいに

(とおりすがってきえていった)

通りすがって消えていった

(おどろにゆれるまっちのひをかかえ)

おどろに揺れるマッチの灯を抱え

(どうやらとてもあたたかく)

どうやらとても暖かく

(なぜだかいやにしずかでうるさい)

何故だか嫌に静かで煩い

(こころみたしてよ)

心満たしてよ

(それはつかのまのこいごころ)

それはつかの間の恋心

(あしたになったらこえるひをけしてよ)

明日になったら肥える灯を消してよ

(つまらないことばかり)

つまらないことばかり

(しらずのまにまにきがふれて)

知らずのまにまに気が触れて

(てきとうなことばがよどむまま)

適当な言葉が澱むまま

(よるのそこへいくれっしゃにのりましょう)

夜の底へ行く列車に乗りましょう

(いけないとしりながら)

いけないと知りながら

(あいされたいのはあなただけ)

愛されたいのはあなただけ

(まちがびしゃびしゃぬれるよるまでは)

街がびしゃびしゃ濡れる夜までは

(たしかにこえであふれていた)

確かに声で溢れていた

(いまではおよそたえがたいくらいの)

今ではおよそ耐え難いくらいの

(しずけさたちがここにいた)

静けさ達がここに居た

(さかながゆれるあめにさいなまれ)

魚が揺れる雨に苛まれ

(どうやらとてもあたたかく)

どうやらとても暖かく

(なぜだかいやにしずかでうるさい)

何故だか嫌に静かで煩い

(こころみたしてよ)

心満たしてよ

(それはでたらめなこいもよう)

それはでたらめな恋模様

(あしたになったらこえるひをけしてよ)

明日になったら肥える灯を消してよ

(つまらないことばかり)

つまらないことばかり

(しらずのまにまにきがふれて)

知らずのまにまに気が触れて

(てきとうなことばがよどむまま)

適当な言葉が澱むまま

(よるのそこへいくれっしゃにのりましょう)

夜の底へ行く列車に乗りましょう

(いけないとしりながら)

いけないと知りながら

(あいされたいのはあなただけ)

愛されたいのはあなただけ

(あめふっておぼれるまちかどで)

雨降って溺れる街角で

(たしかなことなどなんにもなくなって)

確かなことなど何にもなくなって

(くだらないことばかり)

くだらないことばかり

(しらずのまにまにつみあげて)

知らずのまにまに積み上げて

(おとせそのうでのにもつをさ)

落とせその腕の荷物をさ

(よるへしずむにはじゃまになるだけだろう)

夜へ沈むには邪魔になるだけだろう

(いけないとしりながら)

いけないと知りながら

(あいされたいのはあなただけ)

愛されたいのはあなただけ