変梃の市

(やあやあごぶさたあんぽんたんさん)

やあやあ、ご無沙汰！ 安本丹さん

(のうのうしゃらくにおすごしですね)

のうのう洒落に お過ごしですね

(だれかれかまわずやさしいなんて)

誰彼構わず 優しいなんて

(あんがいつめたいひとですね)

案外、冷たい人ですね

(ようようどこぞへとうへんぼくさん)

ようよう、何処ぞへ？ 唐変木さん

(いやにめかしたおめしものですね)

いやに粧飾した お召し物ですね

(ただしさばっかりしゃにむにおって)

正しさばっかり 遮二無二追って

(しんそこまちがったひとですね)

心底、間違った人ですね

(うつくしさによごれていくたんびなこのじょうかん)

美しさに汚れてゆく 耽美なこの情感

(きれいごとはきたなくろぼうにつもる)

綺麗事は汚く 路傍に積もる

(のぼることはおりることせんなきよのじゅんかん)

昇ることは下りること、詮無き世の循環

(ふじゆうのなかのじゆうをかみしめる)

不自由の中の自由を 噛みしめる

(いままでみせたこともないみりょくてきなそのえがおで)

今まで見せたこともない 魅力的なその笑顔で

(きみはどうしてないてるの)

君はどうして 泣いてるの？

(へんてこふじょうりおーきーどーきー)

変梃、不条理 オーキードーキー

(あさやけのさやけさにつつまれたああ)

朝焼けの明さやけさに 包まれた、嗚呼

(としふりたまちのしゅくさいがのろいのようにひびいている)

年古りた市の祝祭が 呪いのように響いている

(じょうどうりせいのあんちのみー)

情動、理性の 二律背反

(しののめにののめくがくたいのねああ)

東雲にののめく 楽隊の音、嗚呼

(ぜつぼうのなかでぼくたちはこうふくなまでにおどったよ)

絶望の中で僕たちは 幸福なまでに踊ったよ

(うかぬかおですねぼくねんじんさん)

浮かぬ顔ですね。朴念仁さん

(みすぎよすぎがおつらいのですか)

身過ぎ世過ぎが おツライのですか？

(あいてをだましていきるだなんて)

相手を騙して 生きるだなんて、

(おもいやりのあるひとですね)

思いやりのある 人ですね

(およびでないとはとんちんかんさん)

お呼びでないとは 頓珍漢さん

(ずいぶんそれはごあいさつですね)

随分それは 御挨拶ですね

(またしにいちねんちかづいたことを)

また死に一年 近づいた事を

(けーきでおいわいしましょう)

ケーキで お祝いしましょう！

(なくしてはじめてたいせつだったと)

失くして初めて 大切だったと

(きづけたなんてさやれなげき)

気づけたなんてさ、やれ嘆き

(せんりょとたいだをたなあげかんしょうひたればそれでもう)

浅慮と怠惰を棚上げ、感傷浸ればそれでもう

(まんぞくかい)

満足かい？

(へんてこふじょうりおーきーどーきー)

変梃、不条理 オーキードーキー

(ゆうまぐれでまぐれてくれまどうああ)

夕間暮れで紛ぐれて 暗れ惑う、嗚呼

(ものさびたかこのねぎごとがくらやみのなかのこうみょうだ)

物寂びた過去の願事が 暗闇の中の光明だ

(じょうどうりせいのあんちのみー)

情動、理性の 二律背反

(たそがれにそがれゆくまちのいろああ)

黄昏に殺がれゆく 市の色、嗚呼

(いえないやまいのただなかでぼくらしたたかにゆめをみる)

癒えない病の只中で 僕ら健に夢を見る

(ひとりがいやなんじゃなくて)

独りが 嫌なんじゃなくて

(ひとりとおもわれるのがいやなんでしょ)

独りと思われるのが 嫌なんでしょ？

(かわりつづけることだけをかわらずにつづける)

変わり続けることだけを 変わらずに続ける

(まいにちだ)

毎日だ

(へんてこふじょうりおーきーどーきー)

変梃、不条理 オーキードーキー

(あさやけのさやけさにつつまれたああ)

朝焼けの明さやけさに 包まれた、嗚呼

(としふりたまちのしゅくさいがのろいのようにひびいている)

年古りた市の祝祭が 呪いのように響いている

(じょうどうりせいのあんちのみー)

情動、理性の 二律背反

(しののめにののめくがくたいのねああ)

東雲にののめく 楽隊の音、嗚呼

(ぜつぼうのなかでぼくたちはこうふくなまでにおどったよ)

絶望の中で僕たちは 幸福なまでに踊ったよ

(またあいましたねとんちんかんさん)

また会いましたね 頓珍漢さん

(あいもかわらずにおひとりですか)

相も変わらずに お独りですか？

(こどくはよいものだといいあえる)

孤独は良いものだと 言い合える

(なかまがほしいとは)

仲間が欲しいとは……

(やはりへんてこなひとですね)

やはり変梃な人ですね