蒼い舟

(かたならしとわらったこのこえはひみつめいたゆめ)

肩慣らしと笑ったこの声は秘密めいた夢

(たそがれにながれしとものこえがしずかにしみいる)

黄昏に流れし友の声が静かに染み入る

(かざむきをみかたにつけただろうあおきこのふねは)

風向きを味方につけただろう蒼きこの舟は

(たおやかにからだをいまつつみしずかにはしりだす)

たおやかに身体を今包み静かに走り出す

(あでやかにまったひとすじのなみだ)

艶やかに舞った一筋の泪

(みないようにしてそのめをかくしてしまって)

見ないようにしてその目を隠してしまって

(わたしたちがここにいるいみがここにある)

私たちがここに居る意味がここに在る

(さがしたものもなくしたものもみえてたはずのじぶんも)

探したものも失くしたものも見えてたはずの自分も

(このままゆうきゅうにつづくじかんにただみをまかせ)

このまま悠久に続く時間にただ身を任せ

(かぎりのないわたしのいくさきをねさがそうか)

限りのない私の行く先をね探そうか

(もうわずかなふあんにさえちいさなしあわせをねがえるでしょう)

もう僅かな不安にさえ小さな幸せを願えるでしょう

(せかいはきょうもたしかにいまとともにある)

世界は今日も確かに「今」と共に在る

(ささやかないのりがゆうぐれにとけだしてうつしだしてくように)

ささやかな祈りが夕暮れに溶け出して映し出してくように

(あのひのわたしにいまてをふろうか)

あの日の私に今手を振ろうか

(あるであいにみちびかれしゆめのなかでおよぐとき)

ある出会いに導かれし夢の中で泳ぐとき

(ゆううつのうみそのさきにみえたかすかにひかるあめ)

憂鬱の海その先に見えた微かに光る雨

(みらいにちらばったかずかずのであいや)

未来に散らばった数々の出会いや

(さけることできないわかれがこわくもある)

避けること出来ない別れが恐くもある

(だいそれたことなんてなにもいえないけど)

大それたことなんて何も言えないけど

(うまれたいみやあゆんだみちやここにいるのがじぶんだ)

生まれた意味や歩んだ道やここに居るのが自分だ

(ここからはじまるすべてのみらいずはみえないけど)

ここから始まる全ての未来図は見えないけど

(そのさきをたなびくかぜがせなかをおして)

その先を棚引く風が背中を押して

(さぁいまこのかぜにゆられためらいのなみだにわかれをつげ)

さぁ今この風に揺られ躊躇いの涙に別れを告げ

(はてしのないわたしみつけるたびへでようか)

果てしのない「私」見つける旅へ出ようか

(やわらかなねがいがこもれびにとけこんであふれだしてくように)

柔らかな願いが木漏れ日に溶け込んで溢れ出してくように

(あのひのわたしがいまほほえみかえす)

あの日の私が今微笑み返す