億万笑者

(あしたにきぼうをもったものだけにぜつぼうがあるんだ)

明日に希望を持った者だけに絶望があるんだ

(なにかをしんじたものだけにうらぎりはあるんだ)

何かを信じたもの者だけに裏切りはあるんだ

(ゆうしゃだけにあたえられためいよのふしょうとでもいうのか)

勇者だけに与えられた名誉の負傷とでも言うのか

(それにしてはずいぶんとわりにあわないな)

それにしては随分と割に合わないな

(てにしたいものがないものにねむれぬよるはないんだ)

手にしたいものがない者に眠れぬ夜はないんだ

(まもりたいものがないものにこのおそれなどないんだ)

守りたいものがない者にこの怖れなどないんだ

(にぎりしめることもなければうばわれることもないんだ)

握りしめることもなければ奪われることもないんだ

(なくしたってきづかぬものからはなにもうばえやしないんだ)

失くしたって気付かぬ者からは何も奪えやしないんだ

(ぜつぼうなんかまだしてんのなにをそんなきたいしてるの)

絶望なんかまだしてんの何をそんな期待してるの

(ごちゅうこくどうもありがとうでもゆずるきはないんだ)

ご忠告どうもありがとうでも譲る気はないんだ

(ぼくはねしってるんだこれらすべて)

僕はね知ってるんだこれら全て

(よろこびのたいかだとばんざいのおたまじゃくしだと)

喜びの対価だと万歳のオタマジャクシだと

(ぼくのかたにのったかれらすべて)

僕の肩に乗った彼ら全て

(たいぎのごとせっとなのかたわれのもとへぶじとどけるまで)

対義の語とセットなの片割れのもとへ無事届けるまで

(うらぎりをしったものだけにうたがいがめばえるんだ)

裏切りを知った者だけに疑いが芽生えるんだ

(そいつをてにしたみずからのけがれをにくむんだ)

そいつを手にした自らの穢れを憎むんだ

(でもそもそものもとをたどってけばただしさにきづくんだ)

でもそもそもの元を辿ってけば正しさに気付くんだ

(どれほどのかちがあったかはてばなしてからしるんだ)

どれほどの価値があったかは手放してから知るんだ

(みがるになったこのからだでぼくはどこにだっていけるよ)

身軽になったこの身体で僕はどこにだって行けるよ

(いやてばなしたときはもうすでにそのかちはわからないんだ)

いや手放した時はもうすでにその価値はわからないんだ

(ぼくだけしってるんだこれらすべて)

僕だけ知ってるんだこれら全て

(よろこびのたいかだとさっこんのどるえんそうばはどう)

喜びの対価だと昨今のドル円相場はどう

(このさいだもうめざそうかせっかくだから)

この際だもう目指そうかせっかくだから

(こうりつゆうせんしじょうしゅぎのげんだいのおくまんしょうしゃでもねえ)

効率優先至上主義の現代の億万笑者でもねえ

(ひとりではかなえられないとこのさみしさはいうんだ)

一人では叶えられないとこの寂しさは言うんだ

(ほんとうにさみしいのはそうおもえなくなることなんだ)

本当に寂しいのはそう思えなくなることなんだ

(ぼくがぼくをあきらめたらもういたみなどないんだ)

僕が僕を諦めたらもう痛みなどないんだ

(それだけでこれらすべてがたまらなくいとしいんだ)

それだけでこれら全てがたまらなく愛しいんだ

(ぼくはねしってるんだこれらすべて)

僕はね知ってるんだこれら全て

(よろこびのたいかだとほんじつのかわせそうばはどう)

喜びの対価だと本日の為替相場はどう

(ねえどうしたのそんなにいっぱいかかえこんでさ)

ねえどうしたのそんなにいっぱい抱え込んでさ

(とんだぶんめいのたいかだとどんだけあざわらわれようと)

とんだ文明の退化だとどんだけあざ笑われようと

(ぼくならだいじょうぶさもうびくともしないから)

僕なら大丈夫さもうビクともしないから

(だってもうじきあえるんだかたわれがまってんだ)

だってもうじき会えるんだ片割れが待ってんだ

(てにいれるんだあなたとはもっとちがうわらいかたをぼくは)

手に入れるんだあなたとはもっと違う笑い方を僕は