手嶌葵【ただいま】

(あなたあてのゆうびんがまだ)

あなた宛ての郵便がまだ

(ぽつりぽつりととどきます)

ぽつりぽつりと届きます

(どあをあけてつけたあかりが)

ドアを開けて点けた明かりが

(きょうもこのむねをくらくする)

今日もこの胸を暗くする

(わかればなしはじょうだんだといって)

別れ話は冗談だと言って

(ふざけたかおでおどろかせておねがい)

ふざけた顔で驚かせてお願い

(「ただいま」とつぶやいた)

「ただいま」とつぶやいた

(おなじけしきにあなただけがいない)

同じ景色にあなただけがいない

(あいしているとすなおになれば)

愛していると素直になれば

(おもいはすべてつたうでしょうか)

想いはすべて伝うでしょうか

(ほほをしずかにながれたほしに)

頬をしずかに流れた星に

(いのるねがいはかなうでしょうか)

祈る願いは叶うでしょうか

(きょねんいっしょにりょこうにいった)

去年一緒に旅行に行った

(ながいやすみがまたきます)

長い休みがまた来ます

(「つぎはきみのうまれたまちがみたい」とやくそくしてたのに)

「次は君の生まれた町が見たい」と約束してたのに

(ちらかすひとにいなくなったへやは)

散らかす人のいなくなった部屋は

(かなしいくらいきれいにかたづいたまま)

悲しいくらい綺麗に片付いたまま

(ちらかったおもいではしまいきれずにむねをあふれてくる)

散らかった思い出は仕舞い切れずに胸をあふれてくる

(ひとりでいきていけるそぶりが)

ひとりで生きていけるそぶりが

(うまくなるのがいやになります)

上手くなるのが嫌になります

(だれもしらないよわいわたしは)

誰も知らない弱い私は

(いつかだれかにであうでしょうか)

いつか誰かに出会うでしょうか

(わすれもののうでどけいがこのてのなかで)

忘れ物の腕時計がこの手の中で

(ああもうもどらないじかんをむじょうにきざむ)

ああもう戻らない時間を無情に刻む

(あいしているとすなおになれば)

愛していると素直になれば

(おもいはすべてつたうでしょうか)

想いはすべて伝うでしょうか

(ほほをしずかにながれたほしに)

頬をしずかに流れた星に

(いのるねがいはかなうでしょうか)

祈る願いは叶うでしょうか

(あなたのこえの「おかえり」がまだ)

あなたの声の「おかえり」がまだ

(めをとじればきこえてくる)

目を閉じれば聞こえてくる