先天性ブリキ症候群

(ぱぱもままもいない)

パパもママも居ない

(こどくなわたしのせかい)

孤独な私の心(セカイ)

(ひかりもとどかない)

光も届かない

(まっしろなこのへやから)

真っ白なこの部屋から

(だれかわたしをつれだして)

誰か私を連れ出して

(ぜんまいをぎりぎりとまいて)

ゼンマイをギリギリと巻いて

(もてあそんだぶりきのいす)

もて遊んだブリキの椅子

(ありすちゅうどくのへやのすみで)

アリス中毒の部屋の隅で

(ばらまいたとらんぷであそぶ)

ばら撒いたトランプで遊ぶ

(しんぞうのしゅくしょうははやくて)

心臓の縮小は早くて

(いたみはもうのうずいにたっす)

痛みはもう脳髄に達す

(のこされたじかんはみじかく)

残された時間は短く

(じゅんけつのまましぬのでしょう)

純潔のまま死ぬのでせう

(きかいじかけのこい)

機械仕掛けの恋

(ぷろぐらむされたあい)

プログラムされた愛

(おきのどくさまね)

お気の毒さまね

(むけるあいてはもういない)

向ける相手はもういない

(しろいしーつのうえ)

白いシーツの上

(あかいはなびらがちるの)

赤い花弁が散るの

(だいたにんぎょうから)

抱いた人形から

(こぼれるなみなみだ)

こぼれるナミナミダ

(さびついたぶりきのわたし)

錆ついたブリキの私

(ひびかたくなっていくこのからだ)

日々硬くなっていくこの体

(かわいくないぶりきのむね)

可愛くないブリキの胸

(かなづちでかたちづくりましょう)

金槌で形作りましょう

(でかだんにつけこまれぬよう)

デカダンに付け込まれぬよう

(あるひはくいをきた)

ある日白衣を着た

(おとなたちがぞろぞろ)

大人たちがぞろぞろ

(ぐりぐりとねがう)

グリグリと願う

(これはわるいゆめだったと)

これは悪い夢だったと

(しへとむかうひびに)

死へと向かう日々に

(したためたしゅきをきみへ)

したためた手記を君へ

(じゅうろくまでいきた)

16まで生きた

(わたしのことをただ)

わたしのことをただ

(しってほしかったのでしょう)

知って欲しかったのでせう

(つちにかえるひを)

土に還る日を

(まちわびていたのか)

待ちわびていたのか

(こくいきたおとなたちが)

黒衣着た大人達が

(むひょうじょうでした)

無表情でした

(みれんがあるとすれば)

未練があるとすれば

(かなわぬねがいをいだき)

叶わぬ願いを抱き

(はなをさかせたまま)

花を咲かせたまま

(ぶりきのにんぎょうに)

ブリキの人形に

(なってしまうことでしょうか)

なってしまうことでせうか

(だれかわたしをこわしてください)

誰か　私を　壊して　下さい