古畑任三郎 名シーン
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問題文
(さてふるはた)
「さて、古畑。」
安斎
(はい)
「はい。」
古畑
(ふるいゆうじんとしてぜひたのみがある)
「古い友人として是非頼みがある。
安斎
(そろそろおれをひとりにしてくれないか)
…そろそろ、俺を一人にしてくれないか?」
安斎
(じさつはいけません)
「自殺はいけません。」
古畑
(かないにつみをきせたりはしない)
「家内に、罪を着せたりはしない。」
安斎
(だとしたらべつにしぬことはない)
「だとしたら別に死ぬことはないー」
古畑
(そうでもない)
「そうでもない!
安斎
(いずれかないとわかいあいじんのことはますこみにしれわたるだろう)
いずれ、家内と若い愛人のことはマスコミに知れ渡るだろう。
安斎
(すでにかぎつけているきしゃもいる)
既に嗅ぎつけている記者もいる。
安斎
(じかんがもうじかんのもんだいだ)
時間が、もう時間の問題だ。
安斎
(このとしになってすきゃんだるはきつい)
この歳になってスキャンダルは…、きつい。
安斎
(あいつとけっこんしたときもさんざんやられた)
あいつと結婚した時も散々やられた!
安斎
(ふたまわりもとしのはなれたわかいおんなをものにしたちゅうねんさっか)
『二回りも歳の離れた若い女をモノにした中年作家!』
安斎
(それまでかいたどのしょうせつよりもばかにされた)
それまで書いたどの小説よりも馬鹿にされた。
安斎
(こんどはそのひじゃないそれみたことかと)
今度はその比じゃない。『それみたことか!』と、
安斎
(ますこみはよってたかっておれをふくろだたきにするだろう)
マスコミは寄ってたかって俺を袋叩きにするだろう!
安斎
(たえがたいことだ)
耐え難いことだ…。
安斎
(ちじょくにまみれたばんねんをすごすくらい)
恥辱にまみれた晩年を過ごすくらい…。」
安斎
(おさっしします)
「…お察しします。」
古畑
(ありがとう)
「…ありがとう。」
安斎
(しかししかしあなたはしぬべきではない)
「しかし!しかし、あなたは死ぬべきではない!
古畑
(たとえすべてをうしなったとしてもわれわれはいきつづけるべきです)
例え全てを失ったとしても、我々は生き続けるべきです。
古畑
(わたしはこれまできょうせいてきにしをえらばされたしたいをかずおおくみてきました)
私はこれまで"強制的に死を選ばされた"死体を数多く見てきました。
古畑
(かれらのむねんなかおはわすれることができません)
彼らの無念な顔は忘れる事が出来ません。
古畑
(かれらのためにもわれわれはいきなければならない)
彼らの為にも我々は生きなければならない。
古畑
(それがわれわれいきているにんげんのぎむです)
それが我々生きている人間の…、義務です。」
古畑
(しぬよりつらいひびがまっていたと)
「死ぬより辛い日々が待っていたとー」
安斎
(だとしてもです)
「だとしてもです。」
古畑
(すべてをうしなうことはたえられない)
「全てを失うことは耐えられない…!」
安斎
(またいちからやりなおせばいいじゃないですか)
「またイチからやり直せばいいじゃないですか。」
古畑
(おれたちはいくつになったとおもってるんだ)
「俺達はいくつになったと思ってるんだ!
安斎
(もうふりだしにはもどれん)
もう振り出しには戻れん!」
安斎
(とんでもないまだはじまったばかりです)
「とんでもない!まだ始まったばかりです。
古畑
(いくらでもやりなおせます)
いくらでもやり直せます。
古畑
(よろしいですかよろしいですか)
よろしいですか?よろしいですか?
古畑
(たとえたとえですねあしたしぬとしても)
例え、例えですね、明日死ぬとしても、
古畑
(やりなおしちゃいけないってだれがきめたんですか)
やり直しちゃいけないって誰が決めたんですか?
古畑
(だれがきめたんですか)
誰が決めたんですか?
古畑
(まだまだこれからです)
…まだまだこれからです。」
古畑
(ふるはた)
「…古畑。」
安斎
(はい)
「はい。」
古畑
(おれのけいかくはことごとくしくじった)
「…俺の計画はことごとくしくじった。
安斎
(だがひとつだけせいかいだったことがある)
だが、一つだけ正解だったことがある。
安斎
(おまえをよんだことだにん)
…お前を呼んだことだ、『ニン』。」
安斎