十四文字の伝言

(ｅｉｎｅｎ　ｂｏｔｓｃｈａｆｔ　ｉｎ　ｖｉｅｒｚｅｈｎ　ｚｅｉｃｈｅｎ)

Einen Botschaft in vierzehn Zeichen

(あなたをたたきおこしきょうもさわがしいいちにちがはじまる)

あなたを　叩き起こし　今日も騒がしい一日が始まる

(すききらいせずやさいもたべなさいとまたききめのうすいこごとをくりかえす)

「好き嫌いせず、野菜も食べなさい！」と　また利き目の薄い小言を繰り返す

(きょうもまたどろだらけになってきずをつくってかえってくるのかしら？)

今日もまた　泥だらけになって　傷を作って帰ってくるのかしら？

(しんぱいばかりでこじわもふえるわ)

心配ばかりで　小皺も増えるわ

(まったくおとこのこのははおやなんてなるもんじゃないわ！)

まったく　男の子の母親なんて　なるもんじゃないわ！

(けれどそんなまいにちをわたしはあいしてた)

けれど　そんな毎日を　私は愛してた

(ほんとうはざんこくなこのせかいを)

本当は　残酷なこの世界を

(ああ・・・じかんよとまれおだやかなときをずっと)

嗚呼…　時間よ止まれ　穏やかな日常をずっと

(ずっと・・・ずっと・・・ずっと・・・あなたたちといきたかった・・・・・・)

ずっと…　ずっと…　ずっと…　あなた達と　生きたかった……

(でもそれはおろかなねがいひとはいずれしにゆくもの)

でも　それは愚かな願い　人はいずれ死に逝くもの

(こはそだちおやをこえていくそれがそれこそがしあわせ)

子は育ち　親を超えて行く　それが　それこそが幸せ

(へいぼんなわたしはながいあいだじぶんのいのちいじょうには)

平凡な私は　長い間　自分の命以上には

(かちのあるものをみつけられなかった)

価値のあるものを　見つけられなかった

(あなたがうまれるまでは・・・・・・)

あなたが　生まれるまでは……

(だからとくべつじゃなくてもひとよりすぐれてなくても)

だから　特別じゃなくても　人より優れてなくても

(だれかにみとめられなくても)

誰かに認められなくても

(あなたはいきてるだけですでにいだいなのよおねがいどうかわすれないで)

あなたは生きてるだけで　既に偉大なのよ　お願い　どうか忘れないで――

(たとえあなたがうまれたことをいつかのろうひがきたとしても)

例えあなたが生まれた事を　いつか呪う日が来たとしても

(しんじているわあなたのゆくみちはまちがってなどいないと)

信じているわ　あなたの行く道は　間違ってなどいないと

(どうかじぶんをしんじて)

どうか　自分を信じて

(さいごのそらにはばたくとりよ)

最期の空に　羽撃く鳥よ

(どうかあのこにつたえておくれ)

どうかあの子に伝えておくれ

(あいしているわあいしているわ)

愛しているわ　愛しているわ

(うまれてきてくれてありがとう)

『うまれてきてくれてありがとう』