南三条

(ちかてつのうみへながれこむひとのながれにみをまかせ)

地下鉄の海へ流れ込む人の流れに身をまかせ

(きょうもながれゆくながれゆくこころのぬけがら)

今日も流れゆく流れゆく心のぬけがら

(たがいにだれもがまるでひとのいないさばくをゆくように)

互いに誰もがまるで人のいない砂漠をゆくように

(うまくすりぬけてすりぬけてふれあわずながれゆく)

うまくすり抜けてすり抜けて触れあわず流れゆく

(とつぜんそでひきかれみれば)

突然袖引かれ見れば

(いきをきらしてるえがお)

息をきらしてる笑顔

(なんてなつかしいとあせかいて)

なんてなつかしいと汗かいて

(わすれたいわすれないあのひのひと)

忘れたい忘れないあの日の女

(みなみさんじょうなきながらはしった)

南三条泣きながら走った

(むねのなかであのあめはやまない)

胸の中であの雨はやまない

(みなみさんじょうよみがえるなつのひ)

南三条よみがえる夏の日

(あのまちなみはあとかたもないのに)

あの町並みはあとかたもないのに

(ながれてゆくひとのながれなにひとつもしらなくて)

流れてゆく人の流れ何ひとつも知らなくて

(ただふたりはしたしそうにみえるだろう)

ただ二人は親しそうに見えるだろう

(あいたかったわあいたかったわとむじゃきはあのひのまま)

会いたかったわ会いたかったわと無邪気はあの日のまま

(あいたくなんかなかったわわたしはいそぐぶり)

会いたくなんかなかったわ私は急ぐぶり

(どこまでゆくのと)

どこまでゆくのと

(せなかでねむるあかごをゆりあげながら)

背中で眠る赤子を揺りあげながら

(わたしふけたでしょうあなたよりとしうえみたいねと)

私ふけたでしょうあなたより年上みたいねと

(なにもきづいてないのね)

なにも気づいてないのね

(いまもあのひとおなじね)

今もあの日と同じね

(もしもあなたなんかこなければ)

もしもあなたなんか来なければ

(いまもまだわたしたちつづいたのに)

今もまだ私たち続いたのに

(みなみさんじょうなきながらはしった)

南三条泣きながら走った

(むねのなかであのあめはやまない)

胸の中であの雨はやまない

(みなみさんじょうよみがえるなつのひ)

南三条よみがえる夏の日

(あのまちなみはあとかたもないのに)

あの町並みはあとかたもないのに

(ほんとはちがうわかっているの)

ほんとは違うわかっているの

(わたしときれてあとのことだと)

私と切れて後のことだと

(でもにくまずにはいられなかったの)

でも憎まずにはいられなかったの

(このひとなのよとよびよせたおとこにこころあたりはなく)

この人なのよと呼び寄せた男に心当たりはなく

(そんなはずはないあのひととしあわせになったはず)

そんなはずはないあの人と幸せになったはず

(とまどうわたしにきづいておしえるくったくのないこえで)

戸惑う私に気づいて教える屈託のない声で

(あなたのしってるあのひととはまもなくきれたわと)

あなたの知ってるあの人とは間もなく切れたわと

(そんなことしらなかった)

そんなこと知らなかった

(かれといるとおもってた)

彼といると思ってた

(ずっとにくんできたむだなひをかえしてと)

ずっと憎んできた無駄な日を返してと

(なにをせめればいいの)

何を責めればいいの

(みなみさんじょうなきながらはしった)

南三条泣きながら走った

(むねのなかであのあめはやまない)

胸の中であの雨はやまない

(みなみさんじょうよみがえるなつのひ)

南三条よみがえる夏の日

(あのまちなみはあとかたもないのに)

あの町並みはあとかたもないのに

(ゆるせないゆるせなかったのは)

許せない許せなかったのは

(あのひあいつをほれさせるさえ)

あの日あいつを惚れさせるさえ

(できなかったじぶんのことだった)

できなかった自分のことだった