モトラド

(こしにたずさえたぱーすえいだー)

腰に携えたパースエイダー

(せっせとたまをこめながら)

せっせと弾を込めながら

(うちつうたれつのせかいで)

撃ちつ撃たれつの世界で

(なんとかやってこれてた)

何とかやってこれてた

(たすけはもとめるなよ)

「助けは求めるなよ」

(くくったはらのかざあなから)

括った腹の風穴から

(いのちをともすがそりんが)

命を灯すガソリンが

(だくだくとこぼれていた)

だくだくと零れていた

(つらかったなぁとみとめるのは)

辛かったなぁと認めるのは

(ほをとめそうでこわくなって)

歩を止めそうで怖くなって

(いまだむずかしいな)

未だ難しいな

(すこしもとまらずあるいて)

少しも止まらず歩いて

(たまにはいいきぶんとはしって)

たまにはいい気分と走って

(くりかえしてやっときづけば)

繰り返してやっと気づけば

(はんたいのほうをむいてた)

反対の方を向いてた

(さんかいまがってあるいて)

三回曲がって歩いて

(どうどうめぐりがおこって)

堂々巡りが起こって

(それでもじょうずなやすみかたを)

それでも上手な休み方を

(しらないままにあせった)

知らないままに焦った

(ふとまえをむけばなにかがあった)

ふと前を向けば何かがあった

(いちだいぽつんともとらどが)

一台ポツンとモトラドが

(おいてきぼりのまま)

おいてきぼりのまま

(すれちがうつもりだった)

すれ違うつもりだった

(こえをかけられておどろいた)

声をかけられて驚いた

(たびとさんきかせてよ)

「旅人さん聞かせてよ

(あなたのみてきたけしきを)

あなたの見てきた景色を」

(しぶしぶそこにとどまって)

しぶしぶそこにとどまって

(そのじつつかれにまけきって)

その実疲れに負け切って

(ほこりまみれなさどるに)

埃まみれなサドルに

(こしをかけてかたった)

腰を掛けて語った

(しばらくたった)

しばらく経った

(もとらどがいった)

モトラドが言った

(ここまでひとりでがんばって)

「ここまで独りで頑張って

(やってきたんだねと)

やってきたんだね」と

(ぽろぽろとなぜか)

ぽろぽろとなぜか

(なみだがおちた)

涙が落ちた

(ふかくかけていたぶれーきが)

深くかけていたブレーキが

(やっとはずれたんだ)

やっと外れたんだ

(またあるくのがこわいなら)

「また歩くのが怖いなら

(おれのあしをつかってもいいよ)

俺の足を使ってもいいよ

(そのかわりにすすむこのさきを)

その代わりに進むこの先を

(しめしておくれよ)

示しておくれよ」

(かるくいれたえんじんは)

軽く入れたエンジンは

(あらけずりなおとがした)

粗削りな音がした

(それでもいい)

それでもいい

(いまはいこう)

今は行こう

(まよったってたのしいよ)

迷ったって楽しいよ

(かるくくんだえんじんは)

軽く組んだ円陣は

(たったふたりのものだった)

たった二人のものだった

(それでもいい)

それでも良い

(つぎにいこう)

次に行こう

(さんにんめをむかえにいくから)

三人目を迎えに行くから