花めかない

(しあわせですだとかよくもわたしのかげでいえたものですね)

「幸せです」だとか　よくも私の陰で言えたものですね

(どうりどおりにしたがえればどうりでみじめなわけがうかがえる)

道理通りに従えれば　どうりで惨めな訳が伺える

(かわいそうにあわれまないでよ)

「可哀想に」憐れまないでよ

(わたしにはふこうがにつかわしいだとか)

私には不幸が似つかわしいだとか

(そういってのみこんだおもいむせぶくらいのこうかいのことのは)

そう言って呑み込んだ　思い咽(ﾑｾ)ぶくらいの後悔の言の葉

(あのときあのときああしていたらきっと)

あの時　あの時　ああしていたら屹度(ｷｯﾄ)

(おわりにしようかどうかどうかさいごだけはわたしのままに)

終りにしようか　どうかどうか　最期だけは私の儘に

(えいえんにきみにやきついてみせようか)

永遠に君に焼き付いてみせようか

(おわりにしようかどうかどうかさいごだけはわたしのままに)

終りにしようか　どうかどうか　最期だけは私の儘に

(いっしょうすきでした)

一生好きでした

(しあわせだったんだかつてわたしのいしでゆだねていました)

幸せだったんだ　嘗(ｶﾂ)て私の意思で委ねていました

(もうひとりであるけないのんきになんともばかなえそらごと)

もう独りで歩けない　呑気に何とも莫迦(ﾊﾞｶ)な絵空事

(あまいのうりをあそぶざんかが)

甘い脳裏を遊ぶ残花が

(わたしにはさちなどしゃらくさいだとか)

「私には幸などしゃらくさい」だとか

(そうさいなんだせつなうきあしだつくらいのどうしようもないじごく)

そう苛(ｻｲﾅ)んだ刹那　浮足立つくらいの如何(ﾄﾞｳ)しようもない地獄

(このままおとなになってあらかたおわりになってしまう)

此の侭大人に成って　あらかた終りになって仕舞う

(そんなみらいならいっそまくらぎのうえでいまここで)

そんな未来なら　いっそ枕木の上で　今此処で

(このままおとなになってもろくもわすれられるならば)

此の侭大人に成って　脆くも忘れられるならば

(わすれはさせないよずっと)

忘れはさせないよ　ずっと

(おわりにしようかどうかどうかさいごだけはわたしのままに)

終りにしようか　どうかどうか　最期だけは私の儘に

(えいえんにきみにやきついてみせようか)

永遠に君に焼き付いてみせようか

(おわりにしようかどうかどうかさいごだけはわたしのままに)

終りにしようか　どうかどうか　最期だけは私の儘に

(まだせいをいとう)

「まだ生を厭(ｲﾄ)う？」

(ああすくいがないまるでそえもののようにつくすじんせいだな)

嗚呼　救いが無い　まるで添え物のように尽くす人生だな

(なげこうかうるんだめすらないわたしを)

嘆こうか　潤んだ目すら無い私を

(おわりにしよう)

終りにしよう

(おわりにしようかどうかどうかさいごだけはわたしのままに)

終りにしようか　どうかどうか　最期だけは私の儘に

(えいえんにきみにやきついてみせようか)

永遠に君に焼き付いてみせようか

(おわりにしようかどうかどうかさいごだけはわたしのままに)

終りにしようか　どうかどうか　最期だけは私の儘に

(いっしょうすきでした)

一生好きでした

(じゃあね)

「じゃあね」