月はそこにいる

(にげばしょをさがしていたのかもしれない)

逃げ場所を探していたのかもしれない

(こわいものみたさでいたのかもしれない)

怖いもの見たさでいたのかもしれない

(あてもなくさばくにたたずんでいた)

あてもなく砂漠に佇んでいた

(おもいがけぬさむさにふるえていた)

思いがけぬ寒さに震えていた

(ゆうぜんとつきはかがやきまぶしさにうたれていた)

悠然と月は輝きまぶしさに打たれていた

(あのさばくにはもうゆけないだろう)

あの砂漠にはもう行けないだろう

(あのしゃくねつはもうたえないだろう)

あの灼熱はもう耐えないだろう

(ひぐらしのこえしおりどひとつ)

蜩の声紫折戸ひとつ

(きょうもしまいととじかけてふとたちすくむ)

今日も終いと閉じかけてふと立ちすくむ

(ゆうぜんとつきはかがやきそこにいてつきはかがやく)

悠然と月は輝きそこにいて月は輝く

(わたしごときでつきはかわらない)

私ごときで月は変わらない

(どこにいようとつきはそこにいる)

どこに居ようと月はそこにいる

(ゆうぜんとつきはそこにいる)

悠然と月はそこにいる

(かなわないあいてにかなわないと)

敵わない相手に敵わないと

(つげてしまいたかっただけかもしれない)

告げてしまいたかっただけかもしれない

(とりよりもたかいいわやまのうえ)

鳥よりも高い岩山の上

(おりみちをなくしてすくんでいた)

降り道を失くしてすくんでいた

(りんぜんとつきはかがやきてんくうのむきをしめした)

凛然と月は輝き天空の向きを示した

(あのやまみちはきえてしまった)

あの山道は消えてしまった

(ひとをよせなくなってしまった)

人をよせなくなってしまった

(ひびのしまつにきゅうきゅうとして)

日々の始末に汲汲として

(また１にちをとじかけてふとたちすくむ)

また１日を閉じかけてふと立ちすくむ

(りんぜんとつきはかがやくそこにいてつきはかがやく)

凛然と月は輝くそこにいて月は輝く

(わたしごときでつきはかわらない)

私ごときで月は変わらない

(どこにいようとつきはそこにいる)

どこにいようと月はそこにいる

(りんぜんとつきはそこにいる)

凛然と月はそこにいる