本日よりありがとうを差別用語とする

(みとはありがとうがきらいだった)

ミトはありがとうが嫌いだった

(かんしゃするがわとされるがわという)

感謝する側とされる側という

(かくさをうみだすあくまのことば)

格差を生み出す悪魔の言葉

(さつじんほうかてんばいにならぶつみ)

殺人・放火・転売に並ぶ罪

(みとがきらいということはまちがったことなのだ)

ミトが嫌いということは間違ったことなのだ

(まちがいはたださねばならない)

間違いは正さねばならない

(みとはせいとそうかいにのりこんだ)

ミトは生徒総会に乗り込んだ

(ほんじつよりありがとうをさべつようごとするべきだ)

本日より「ありがとう」を差別用語とするべきだ

(みとめるまでしおをなめるぞ)

認めるまで塩を舐めるぞ

(えれがんとなせんりゃく)

エレガントな戦略

(みとのかおがあくむのように)

ミトの顔が悪夢のように

(しなびてくろずんだころ)

萎びて黒ずんだころ

(さんせい１はんたい３００で)

賛成1　反対300で

(ついにかけつされた)

ついに可決された

(なるはありがとうをまもらんとする)

ナルはありがとうを守らんとする

(きけんしそうをもったてろりすと)

危険思想を持ったテロリスト

(しんせつにされたらかんしゃしたくなる)

親切にされたら感謝したくなる

(うまれながらいじょうしゃなのだ)

生まれながら異常者なのだ

(せきをゆずりいいところをほめ)

席を譲りいいところを褒め

(つらいときそっとそばにいて)

辛い時そっとそばにいて

(つみのないひとにかんしゃさせる)

罪のない人に感謝させる

(げれつきわまりない)

下劣極まりない

(つかまえろ)

捕まえろ！

(そのあとなるはごめんなさいとあやまったが)

その後ナルは「ごめんなさい」と謝ったが

(そのことばもあやまるがわあやまられるがわ)

その言葉も謝る側 謝られる側

(かくさをうみだした)

格差を生み出した

(らくだのふけいかのかすめ)

ラクダのフケ以下のカスめ！

(てっていてきにうちのめそう)

徹底的に打ちのめそう！

(みとのこえにはもはやだれも)

ミトの声にはもはや誰も

(ついてこなかった)

ついてこなかった

(みとがわっとないたので)

ミトがわっと泣いたので

(なるはそっとそばにいた)

ナルはそっとそばにいた

(きらいなものはきらいだよ)

「嫌いなものは嫌いだよ」

(みとはくやしくてたまらない)

ミトは悔しくてたまらない

(なるはてをさしだした)

ナルは手を差し出した

(きらいなものはきらいでいいよ)

「嫌いなものは嫌いでいいよ」

(でもなにがまちがっているのかは)

「でも何が間違っているのかは」

(みんなできめたいんだ)

「みんなで決めたいんだ」

(ただしいとしんじながら)

正しいと信じながら

(だれかにとってのまちがいを)

誰かにとっての間違いを

(らんぼうにふりまわすのが)

乱暴に振り回すのが

(ひとのよわさだから)

人の弱さだから

(まちがいとしんじながら)

間違いと信じながら

(だれかにとってのただしいを)

誰かにとっての正しいを

(たいせつにつつんだなるは)

大切に包んだナルは

(とてもつよくみえた)

とても強く見えた

(みとはおれいをいわない)

ミトはお礼を言わない

(それでもなるのてをとった)

それでもナルの手を取った