ツギハギ惨毒

(いとをたぐりよせさびたはりにとおす)

糸を手繰り寄せ錆びた針（の穴）に通す。

(こすれるおとがみみにさわります)

擦れる音が　耳に障ります。

(おもいでのつまったくたびれたぬのと)

思い出の詰まった草臥れた布と

(がくぶちのなかふたりきりやせこけたかお)

額縁の中で二人きり　痩せこけた顔。

(かなしいからかかえていた)

悲しいから抱えていた

(おにんぎょうさんはこわれて)

お人形さんは壊れて

(うでがとれておめめがない)

腕が取れてお目々がない

(つぎはぎあわせでなおしてよ)

お母様、継ぎ接ぎで合わせて直してくれませんか？

(ひとりぼっちのへやのなかおにんぎょうさんとおしゃべり)

ひとりぼっちの部屋の中　お人形さんとお喋り。

(あいそがわるくてわらわないこだね)

まったくあんたは愛想が悪くて笑わない子だねぇ

(おかあさんがいうの)

ってお母さんが言うの。

(ひとりさみしいおゆうしょくおにんぎょうさんとたべるの)

一人寂しいお夕食　お人形さんと食べるの。

(さめたひとかけのぱんととまとのすーぷにうつるわたしのおかお)

冷めたひとかけのパンと　トマトのスープに映る私のお顔。

(ちいさくうたう)

小さくうう、う、う歌う

(らららのこえは)

ららら　の、　こ、声は。

(つめたいへやに)

つ、冷たい部、や屋に

(すこしだけひびいて)

少々、すこ、しだけ響いて

(まんなかにすわる)

中央に座っています

(わたしのずじょうできえた)

私の頭上で消えました！

(さみしいね)

寂しい音？

(さみしいよ)

寂しい夜。

(どこもかしこもくさってゆく)

どこもかしこも腐ってゆく

(ひとりぼっちのへやのなかおにんぎょうさんとおしゃべり)

ひとりぼっちの部屋の中　お人形さんとお喋り。

(あなたはわるいこなんかじゃないから)

「貴女は悪い子なんかじゃないから」

(おにんぎょうさんがいうの)

ってお人形さんが言うの。

(ひとりさみしいおゆうしょくおにんぎょうさんとたべるの)

一人寂しいお夕食　お人形さんと食べるの。

(さめたひとかけのおおきなおにくとあかぐろいぜりぃー)

冷めたひとかけの大きなお肉と赤黒いゼリィー

(いつかのえほんのなかではたのしそうにわらうかぞく)

いつかの絵本の中では　楽しそうに笑う家族の姿。

(まほうのせかいとわたしのせかいはこんなにもちがうの)

魔法の世界と私の世界は　こんなにもちがうの

(みぎてににぎったさみしさに)

「そして彼女は右手に握った寂しさに

(あるだけのあいをつめこむ)

「在るだけ」の愛を詰め込んだ

(しずかなそこには)

気づけば時間が過ぎたようだ。 静かな部屋の「其処」には

(ひとかけのははがさらにのり)

ひとかけの母が皿に乗り

(こちらをみつめて)

こちらを見つめて何かを訴えていた。」