ライオン

(やさしいひざしやわらかなとりのこえ)

優しい陽射し　柔らかな鳥の声

(からっぽになるあなたのあいしたまどり)

空っぽになる　あなたの愛した間取り

(はがれおちたぺんきのこまかなくず)

剥がれ落ちた　ペンキの細かな屑

(ふたつかったしみのついたさら)

ふたつ買った染みのついた皿

(なじんだそのすべてのあそびどうぐを)

馴染んだそのすべての遊び道具を

(かたくしばりふたをしたひろくよみがえるへや)

固く縛り蓋をした　広く蘇る部屋

(うそみたいにあかるい)

嘘みたいに明るい

(らいおんきつくなったおりからでていくふたり)

ライオン　詰くなった檻から出ていくふたり

(ずっとおなじようにわらっているだろうか)

ずっと同じように笑っているだろうか

(ふるいしゃしんいまよりわたしはほそく)

古い写真　今よりわたしは細く

(かおのしわもまぶたのあつさもちがう)

顔の皺も　目蓋の厚さも違う

(あなたのほうはこしにとどくようなかみ)

あなたの方は　腰に届くような髪

(こはくいろのたてがみにみえた)

琥珀色のたてがみに見えた

(するどいそのしせんのうらにひそむこどくなひびのいとなみを)

鋭いその視線の裏に潜む　孤独な日々の営みを

(わたしというえのぐでぬりつぶせるとおもった)

わたしという絵具で　塗り潰せると思った

(らいおんきつくなったおりからでていくふたり)

ライオン詰くなった檻から出ていくふたり

(またにてるひとをさがしてしまうだろうか)

また似てる人を探してしまうだろうか

(らいおんきつくなったおりからでていくふたり)

ライオン　詰くなった檻から出ていくふたり

(もうどこにいてもわたしをさがさないで)

もう何処に居てもわたしを捜さないで

(らいおんきつくなったおりからあなたをはなそう)

ライオン　詰くなった檻からあなたを放そう

(ずっとおなじようにわらっているだろうか)

ずっと同じように笑っているだろうか