cream

(どうぞきになさらないで)

どうぞ気になさらないで。

(わたしただのかずあわせです)

私、ただの数合わせです。

(どうせわたしなんてすきまうめるそえもののくりーむ)

どうせ私なんて、隙間埋める添えもののクリーム。

(こんやのだいちゅうもくはかわいくととのったぷりんです)

今夜の大注目は、可愛く整ったプリンです。

(だけどわたしだけつぶれてめいくもくずれてる)

だけど私だけ、つぶれて型も崩れてる。

(どうしてここにいるんだろう)

どうして、ここに居るんだろう。

(わたしもいちどくらいはかれがとびつくようなめいんになりたいよ)

私も一度くらいは、彼が飛びつくような主役になりたいよ。

(なんて)

……なんて。

(きらめくひとみとかんばしいかおりを)

煌めくヒトミと、芳しいカオリを、

(ひきたてるためのわたしはくりーむ)

引き立てるための、私はクリーム。

(こんやのどらまのえんどろーるには)

今夜のドラマのエンドロールには、

(のせられないえきすとらでしょ)

載せられないエキストラ、でしょ。

(わたしだけわたしだけ)

私だけ。私だけ。

(なにかをきたいしたまるでばかみたい)

何かを期待した、まるでバカみたい。

(わたしだけわたしだけ)

私だけ。私だけ。

(あなたのすぷーんがこない)

あなたのスプーンが来ない。

(こんやもだいにんきなのはまっかにきかざるいちごです)

今夜も大人気なのは、真っ赤に着飾る苺です。

(だけどわたしにはなにのとりえもありはしない)

だけど私には、何の色もありはしない。

(どうしてここにきたんだろう)

どうして、ここに来たんだろう。

(わたしもゆめにみているかのじょがあこがれるはやりでいたいのに)

私も夢にみている、彼女が憧れる流行でいたいのに。

(なんていえないよ)

……なんて言えないよ。

(あいをほしがってほのかににおわせて)

アイを欲しがって、ホノカに匂わせて、

(あわだてるだけのわたしはくりーむ)

泡立てるだけの、私はクリーム。

(こんやのどらまのじかいよこくには)

今夜のドラマの次回予告には、

(よばれないえきすとらねぇ)

呼ばれないエキストラ、ねぇ。

(やりなおしたあいらいんもきあいをいれてきたふくも)

やりなおしたアイラインも、気合いを入れて着た服も。

(ただのそえものがめだっていちゃだめなんだって)

ただの添えものが目立っていちゃダメなんだって、

(わかってるよ)

わかってるよ。

(しゅうでんまぢかのごぜん０じには)

終電間近の午前0時には、

(かれとかのじょはもうやくそくをしてる)

彼と彼女はもう約束をしてる。

(こんやのどらまのじょえんじょゆうは)

今夜のドラマの助演女優は、

(さらのうえでただとけてないた)

皿の上でただ溶けて泣いた。

(きらめくひとみとかんばしいかおりを)

煌めくヒトミと、芳しいカオリを、

(ひきたてるためのわたしはくりーむ)

引き立てるための、私はクリーム。

(こんやのどらまのえんどろーるには)

今夜のドラマのエンドロールには、

(のせられないえきすとらでしょ)

載せられないエキストラ、でしょ。

(すこしだけすこしだけ)

少しだけ。少しだけ。

(あなたのほおにのこるしょくごのくりーむ)

あなたの頬に残る、食後のクリーム。

(すこしだけすこしだけ)

少しだけ。少しだけ。

(こんやはそのほおにまだよりそっていたいの)

今夜はその頬に、まだ寄り添っていたいの。