家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。

(どあをあけたらつまがたおれてる)

ドアを開けたら妻が倒れてる

(せなかにつきささるほうちょう)

背中に突き刺さる包丁

(ゆかはちまみれ)

床は血まみれ

(しらないひとがみたらきぜつするかもしれない)

知らない人が見たら気絶するかも知れない

(ぼくがおちついて)

僕が落ち着いて

(きょうのはそうじがたいへんそうだ)

「今日のは掃除が大変そうだ」

(とわらうと)

と笑うと

(つまはうつぶせのまままんぞくそうに)

妻はうつ伏せのまま満足そうに

(くくくとわらってた)

クククと笑ってた

(いえにかえるとつまがかならずしんだふりをしています)

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。

(あすはどんなしにかたしているのか)

明日はどんな死に方しているのか

(よそうすらできない)

予想すらできない

(あるひはあたまにやがささってたり)

ある日は頭に矢が刺さってたり

(ぐんぷくでじゅうかかえてたり)

軍服で銃抱えてたり

(まんぼうのきぐるみがしんでたときは)

マンボウの着ぐるみが死んでたときは

(どあしめようかとおもった)

ドア閉めようかと思った

(あとかたづけもけっこうたいへんで)

後片付けも結構大変で

(ゆかのちのりをあらったり)

床の血糊を洗ったり

(やがささったままばんごはんつくるのは)

矢が刺さったまま晩ご飯作るのは

(かんべんしてほしい)

勘弁して欲しい

(いえにかえるとつまがかならずしんだふりをしています)

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。

(ちょっとほめるとちょうしにのるから)

ちょっとホメると調子に乗るから

(できるだけするーで)

できるだけスルーで

(けっこんまえはいそがしくても)

結婚前は忙しくても

(かのじょにあうだけでたのしかった)

彼女に会うだけで楽しかった

(てつやでくるまあてもなくとばして)

徹夜でクルマ当てもなく飛ばして

(うみみにいったりしたのに)

海見に行ったりしたのに

(けっこんちょくごはじめてぶかをもち)

結婚直後初めて部下を持ち

(しごとがとてもたのしくなった)

仕事がとても楽しくなった

(いえでひとりでまつつまのきもちを)

家で一人で待つ妻の気持ちを

(かんがえていなかった)

考えていなかった

(いえにかえるとつまがかならずしんだふりをしてるのは)

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしてるのは

(あのころのふたりにもどりたいからか)

あの頃の二人に戻りたいからか

(ぼくにはわからない)

僕には分からない

(いえにかえったぼくをまってるつまのえんぎみることが)

家に帰った僕を待ってる 妻の演技見ることが

(ぼくらふたりのあいのかたちならば)

僕ら二人の愛の形ならば

(それはそれでありだろう)

それはそれでありだろう

(いえにかえるとつまがかならずしんだふりをしています)

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。

(きょうはどんなしにかたしているのか)

今日はどんな死に方しているのか

(きたいしてあけるどあ)

期待して開けるドア