売れない本の主人公たちへ

(あぁそうなんだいがいだ)

「あぁ、そうなんだ。意外だ」

(はじめてきいたから)

「はじめて聞いたから」

(いつからそうおもってた)

「いつからそう思ってた？」

(えーいいなそれ)

「えーいいな、それ」

(たしかしょうらいなりたいしょくぎょうはさっかーせんしゅくらいでした)

たしか将来なりたい職業はサッカー選手、くらいでした

(むやみにこうていできなくてむやみにひていをくりかえし)

むやみに肯定できなくて　むやみに否定を繰り返し

(ほんとにしりたかったのはじょうずにのぞむほうほうだ)

ほんとに知りたかったのは上手に望む方法だ

(ねぼくにはもうねてみるだけのゆめさえみられない)

ね、僕にはもう寝て見るだけの夢さえ見られない

(ぼくにはゆめがあってきみにはゆめがないけど)

僕には夢があって　君には夢がないけど

(くらべてみたらゆめであってたいしたものにはならないから)

比べてみたら夢であって　大したものにはならないから

(きみにはゆめがあってぼくにはゆめがないけど)

君には夢があって　僕には夢がないけど

(おおきすぎるゆめであってそれでもいだかなきゃなにもはじまらない)

大きすぎる夢であって　それでも抱かなきゃなにも始まらない

(そうかもな)

「……そうかもな」

(それはげんじつてきにかんがえて)

「それは現実的に考えて？」

(なるほどそこがねっくかあ)

「なるほど、そこがネックかあ」

(そうだかなうのならばのぞんでいたいむくわれるのならがんばりたい)

そうだ、叶うのならば望んでいたい　報われるのなら頑張りたい

(なのにどうしてやりたくないゆめってなくてはだめですか)

なのにどうしてやりたくない　夢ってなくてはだめですか

(やりたいことはなんですかすきなことはなんですか)

やりたいことはなんですか　好きなことはなんですか

(えきゅうにいまってはなしもうきみにはやぶれるゆめさえない)

え、急に今？　って話　もう君には破れる夢さえない

(ねがえばかなうだなんてかなったひとだけがいった)

願えば叶うだなんて　叶った人だけが言った

(あるほうがめずらしいらしいゆめにいだかれてねむった)

ある方が珍しいらしい　夢に抱かれて眠った

(きらきらひかるたにんのゆめに)

きらきら光る他人の夢に

(ぼくにはゆめがあってきみにもゆめがあったけど)

僕には夢があって　君にも夢があったけど

(すきないろとにあういろがかさならないこともあるように)

好きな色と似あう色が　重ならないこともあるように

(きみにはゆめがあってぼくにもゆめがあったから)

君には夢があって　僕にも夢があったから

(ぼくらはえらんでいったいやになってもいやにならないほうへ)

僕らは選んでいった　嫌になっても嫌にならない方へ