永訣の時

(らおう)

ラオウ！

(たがいにむそうてんせいをみにまとったいま おうぎはぶきにはならぬ)

互いに無想転生を身にまとった今 奥義は武器にはならぬ！

(そういわばむ ぜろにもどったのだ)

そう　言わば無... ゼロに戻ったのだ

(いくぞけんしろう)

いくぞケンシロウ！

(にくをえぐるこのいたみ こころのしんにとどく)

肉をえぐるこの痛み 心の芯に届く

(だれよりもすさまじく あついこのこぶしは)

誰よりもすさまじく 熱い　このこぶしは

(もうおまえしかみえない)

もうお前しか見えない

(あこがれたいだいなるわがあに)

憧れた偉大なる我が兄

(おれはこれをまってたのか)

俺はこれを待ってたのか

(くだいてやる)

砕いてやる

(いのちをかけておまえを)

命をかけてお前を！

(ぼうりょくのこうやをこえて)

暴力の荒野を超えて

(いまおまえにたどりついた)

今　お前にたどり着いた

(はるかなこのたびにしゅうしふを)

遥かなこの旅に終止符を！

(これで)

これで...

(きまる)

決まる...

(けん)

ケン！

(なぜなく)

なぜ泣く!?

(もはやつぎのいちげきが われらのわかれとなるだろう)

もはや次の一撃が 我らの別れとなるだろう

(おれとときがおなじくめざした あのいだいなるちょうけいらおう)

俺とトキが同じく目指した あの偉大なる長兄ラオウ

(このむねにいまだきえずにやきついている)

この胸に今だ消えずに焼き付いている

(よかろうならばくだいてみせよう)

良かろう！　ならば砕いてみせよう

(このけんにわがしょうがいのすべてをこめて)

この拳に我が生涯のすべてを込めて！

(てんにめせけんしろう)

天に召せ！　ケンシロウ！

(ばかなおれの このらおうのぜんれいのけんが)

馬鹿な！　俺の... このラオウの全霊の拳が...！

(おまえのこころはひとりだが おれのなかにはおおくのなかまへのおもいがいきている)

お前の心は一人だが 俺の中には多くの仲間への想いが生きている

(てんちをくだくごうけんも このひとにぎりのこころをくだくことはできぬ)

天地を砕く剛拳も この一握りの心を砕くことはできぬ！

(あーあーあーあーあーあーあー)

アーアーアーアーアーアーアー

(あーあーあーあーあーあーあーあーあー)

アーアーアーアーアーアーアーアーアー

(あいをすてたものと こころにあいをきざみこんだもののちがいだというのか)

愛を捨てた者と 心に愛を刻み込んだ者の違いだと言うのか!?

(わたしにはわかるあなたもそのむねに)

私にはわかる　あなたもその胸に

(とき)

トキ...

(ふかいあいをきざんだはず)

深い愛を刻んだはず

(あいをおびるなどわがけんにはちじょく)

愛を帯びるなど我が拳には恥辱！

(おれはほくとのちょうけいだ)

俺は北斗の長兄だ！

(けんしろう このらおうまだしんではおらぬぞ)

ケンシロウ... このラオウまだ死んではおらぬぞ...！

(すでにみきっておったか)

既に見切っておったか...

(わがけんにはもはや おまえをくだくちからなどのこっていないことを)

我が拳にはもはや お前を砕く力など残っていないことを

(らおう)

ラオウ...

(みせてくれ このらおうをたおしたおとこのかおを)

見せてくれ このラオウを倒した男の顔を

(みごとだおとうとよ)

見事だ　弟よ！

(らおう)

ラオウ...！

(けんゆりあさんが ゆりあさんがいきてる)

ケン！　ユリアさんが ユリアさんが生きてる

(なに)

なに？

(かしじょうたいにしただけだ)

仮死状態にしただけだ

(ゆけ)

行け！

(ゆりあ)

ユリア...！

(けん)

ケン！

(ゆりあいきろよ おまえののぞむままに)

ユリア　生きろよ お前の望むままに

(らおう)

ラオウ...

(けんしろうさらばだ)

ケンシロウ　さらばだ！

(このらおう てんにかえるにひとのてはかりぬ)

このラオウ 天に帰るに人の手は借りぬ

(わがしょうがいにいっぺんのくいなし)

わが生涯に一片の悔いなし!!

(ああこのむねにきざもう)

ああ　この胸に刻もう

(てんをめざしていきぬいた)

天を目指して生きぬいた

(そのかなしみそのあいとこどく)

その哀しみ　その愛と孤独

(こうやをかけぬけたいのちを)

荒野を駆け抜けた命を

(らおうよときとともにねむれ)

ラオウよ　トキと共に眠れ

(おれはあなたのいきざまをむねに ほくとしんけんでんしょうしゃとしていきよう)

俺は貴方の生き様を胸に 北斗神拳伝承者として生きよう

(あのひうみはかれだいちはもえつきた)

あの日　海は枯れ　大地は燃え尽きた

(ただいきるためころしあい)

ただ生きるため殺し合い

(やぼうがひらくものあいがすくうもの)

野望が開くもの　愛が救うもの

(かぞえきれないいのちのかなしみを)

数えきれない命の哀しみを

(かたりつげあたらしいじだいのため)

語り継げ　新しい時代のため

(あーあーあーあー)

アーアーアーアー

(あーあーあーあーあー)

アーアーアーアーアー

(けん)

ケン!!