spill／志麻

(のばされたてがぼくにふれた)

伸ばされた手が僕に触れた

(わらったきみはべっどのうえで)

笑った君はベッドの上で

(くだされためいにほだされてる)

下された命に絆されてる

(こおったはなはいつしんだのだろう)

凍った花はいつ死んだのだろう

(こうしてゆずりあうかいわのなかで)

こうして譲り合う会話の中で

(ついむかしばなしをしちゃうとよどみだしてしまうから)

つい昔話をしちゃうと淀み出してしまうから

(きみがこぼれおちてすうじかんはぼくもどっかいっちゃって)

君が零れ落ちて数時間は僕もどっかいっちゃって

(ずっとずっとずっときっとがかけめぐってたんだよ)

ずっと ずっと ずっと “きっと” が駆け巡ってたんだよ

(いっそころしたいんだぼくをなんてゆだりきったざれごとだと)

“いっそ殺したいんだ僕を” なんて 茹だり切った戯言だと

(わかってるちいさなてがぼくにふれた)

解ってる 小さな手が僕に触れた

(みちいくひとはかわらなくて)

道行く人は変わらなくて

(かぜにふかれてなきそうにかおしかめてる)

風に吹かれて泣きそうに顔しかめてる

(だきあげてぎゅっとだきしめるよ)

抱き上げてぎゅっと抱き締めるよ

(よくにたひとみがふしぎにしてた)

よく似た瞳が不思議にしてた

(せかいへのぜつぼうかんはまだぬぐえなくて)

世界への絶望感はまだ拭えなくて

(とらわれはじめるとすぐにときはすぎてしまうから)

囚われ始めるとすぐに 時は過ぎてしまうから

(きみとあるいてきたすうねんかんのきおくをまくってんだ)

君と歩いてきた数年間の記憶を捲ってんだ

(ずっとずっとずっとそれがあざやかであるように)

ずっと ずっと ずっと それが鮮やかであるように

(だってつたえたいんだきみのことばつなぎたいんだきみのゆめを)

だって伝えたいんだ君の言葉 繋ぎたいんだ君の夢を

(わらってるおさないこえいとしきこえ)

笑ってる幼い声 愛しき声

(はやくはやくさざなみにはしゃいでる)

“早く早く” さざ波に はしゃいでる

(ぼうしおさえながらおどるきみ)

帽子押さえながら踊る君

(いちにのさんねすこしよりそいながら)

“いちにのさんね” 少し寄り添いながら

(まぶたあけてみとれるぎんが)

まぶた開けて見惚れる銀河

(てつないでいいふるゆきをあいずに)

“手、繋いで良い？” 降る雪を合図に

(ぼくはにぎりしめていいました)

僕は握りしめて言いました

(ここちらこそよそいきのことばどうし)

“こ、こちらこそ” 余所行きの言葉同士

(あかくなったほおをくっつけた)

赤くなった頰をくっつけた

(まるでゆめみたいきみはおおげさに)

“まるで夢みたい” 君は大袈裟に

(ぼくよりもうれしそうなしずくがつたってふゆをとかしてく)

僕よりも嬉しそうな雫が伝って冬を溶かしてく

(はるのかぜがふいたからおもいだしたんだろう)

春の風が吹いたから 思い出したんだろう

(いつもはしりだしてすうびょうかんごふりむいていうんだ)

いつも走り出して数秒間後 振り向いて言うんだ

(はやくはやくはやくてをふってわかってるよわかってる)

“早く早く早く” 手を振って わかってるよ わかってる

(ぼくはすこしだけうえをむいておいかけたたからもの)

僕は少しだけ上を向いて追いかけた たからもの

(つないでるちいさなてもきみのゆめも)

繋いでる 小さな手も 君の夢も