スパイラル／センラ

(わたしはすきなのよ)

私は好きなのよ。

(ひとりでかってにおわりにしないで)

ひとりで勝手に、終離にしないで。

(まよなかのあめはきがきくみたい)

真夜中の雨は、気が利くみたい。

(ひげきをかくすから)

悲劇を隠すから。

(えきどおりのらせんかいだんには)

駅通りの螺旋階段には、

(あしたからひとりでおりるのね)

明日からひとりで降りるのね。

(わかれぎわのそのことばはなぐさめにはならないのよ)

別れ際のその言葉は、慰めにはならないのよ。

(あまいきたいがわたしをくるしめる)

甘い期待が私を苦絞める。

(そんなきゅうにかこにおもいでのようにいわないで)

そんな急に、過去に思い出のように言わないで。

(わたしまだあなたをわすれたわけじゃない)

私、まだ貴方を忘れたわけじゃない。

(すきよなんで)

好きよ。なんで......。

(らせんがまわるようにさまよってるの)

螺旋が廻るように錯迷ってるの。

(わたしはすきなのよ)

私は好きなのよ。

(ひとりでかってにおわりにしないで)

ひとりで勝手に、終離にしないで。

(ただいまとつぶやくごぜん０じ)

ただいまとつぶやく午前0時。

(おかえりはきこえない)

おかえりは聞こえない。

(せんめんだいにできたうずはぐるっと)

洗面台にできた渦はぐるっと、

(くずれてたますからをながす)

崩れてたマスカラを流す。

(まちうけにしたしゃしんとからいしゅうのよていちょうだとか)

待受にした写真とか、来週の予定帳だとか、

(そのすべてがとげにかわってく)

そのすべてが棘に化悪ってく。

(さいこうのおわりみたいにまえをむかないで)

最高の終わりみたいに、前を向かないで。

(わたしまだあなたのようにわらえないの)

私、まだ貴方のように笑えないの。

(いかないで)

行かないで......。

(らせんがおちるようにぬけだせないの)

螺旋が落散るように抜け出せないの。

(わたしはまってるから)

私は待ってるから。

(ふたりでまたゆめをみれること)

ふたりでまた夢を見れること。

(あめがあがればすべてかわくように)

雨があがればすべて乾くように、

(おもいではうつくしさだけをのこしてはきえてゆくって)

思い出は、美しさだけを遺しては消失てゆくって。

(みにくくてもなんでもよい)

醜くても何でも良い。

(きずがのこるようなずるいきすをしてよ)

記憶が遺るような......ずるいキスをしてよ。

(わすれたくなんてない)

忘れたくなんてない。

(そんなかこのおもいでのようにいわないで)

そんな、過去の思い出のように言わないで。

(わたしまだあなたをわすれたわけじゃない)

私、まだ貴方を忘れたわけじゃない。

(すきよなんで)

好きよ。なんで......。

(らせんをえがくようにこいにおちたの)

螺旋を描くように恋に落ちたの。

(わたしはすきなのよ)

私は好きなのよ。

(あなたのこえも)

貴方の声も。

(ながいまつげも)

長いまつげも。

(ひとりでかってにおわりにしないで)

ひとりで勝手に、終離にしないで。