くま　メメントモリより

(まるめたぱんのみみのようひとりぼっちのへやで)

丸めたパンの耳のよう ひとりぼっちの部屋で

(あなたのいつもいたばしょにすわってみる)

あなたの いつもいた場所に座ってみる

(なんだかおちつかない)

なんだか落ち着かない

(くまくんきいてよ)

くまくん 聞いてよ

(こころをなぞる)

心をなぞる

(ぶきようなゆびがなつかしいんだ)

不器用な指が 懐かしいんだ

(くまくんどうして)

くまくん どうして

(やわらかなきずふさがらないのこぼれていくよ)

柔らかな傷 塞がらないの こぼれていくよ

(ゆめのなかまで)

夢の中まで

(ほつれたいとたぐりよせても)

ほつれた糸 手繰り寄せても

(ふれてとけたないてそれでおしまい)

触れて 溶けた 泣いて それで おしまい

(だきしめたなつかしいにおいは)

抱きしめた懐かしい匂いは

(いつかはかぜがさらう)

いつかは 風がさらう

(なみだをぬぐうふぇるとのくま)

涙を拭う フェルトのくま

(あなたはどこかねむたげなこえでなまえをよんで)

あなたは どこか眠たげな声で名前を 呼んで

(やさしくためらうみたいにかたをよせる)

優しく 躊躇うみたいに 肩を寄せる

(ひかえめなおもさで)

控えめな重さで

(くまくんきいてよ)

くまくん 聞いてよ

(もうすこしだけ)

もう少しだけ

(いびつなぬいめとれかけのぼたん)

いびつな縫い目 取れかけのボタン

(くまくんどうして)

くまくん どうして

(わたしはいつもだいじなものをみすごすのだろう)

私はいつも 大事なものを 見過ごすのだろう

(さがしてたのに)

探してたのに

(さよならのそくどはうたかた)

さよならの速度は うたかた

(ひらりおちたきえてみえなくなるの)

ひらり 落ちた 消えて 見えなくなるの

(たしかめあえたきずなだけは)

確かめ合えた 絆だけは

(いまでもつまってるの)

今でも詰まってるの

(やぶれかけたふぇるとのくま)

破れかけた フェルトのくま

(いつかみたゆめのなか)

いつか見た夢の中

(あとすこしてをのばせたら)

あと少し 手を伸ばせたら

(そこにいられたかな)

そこにいられたかな

(ほつれたいとたぐりよせても)

ほつれた糸 手繰り寄せても

(ふれてとけたないてそれでおしまい)

触れて溶けた泣いて それで おしまい

(だきしめたなつかしいにおいは)

抱きしめた懐かしい匂いは

(いつかはかぜがさらう)

いつかは風がさらう

(なみだをぬぐうふぇるとのくま)

涙を拭う フェルトのくま