芝居

(もしもこれがえいがだとして)

もしもこれが映画だとして

(きょうはどんなしーんだろう)

今日はどんなシーンだろう

(ひとつもかいけつしていないから)

ひとつも解決していないから

(おわりはまださきだろう)

終わりはまだ先だろう

(かんじんなせりふをまちがえて)

肝心な台詞を間違えて

(またひとをきずつけたり)

また人を傷つけたり

(だれかのえんぎをまねてみて)

誰かの演技を真似てみて

(よりじぶんがわかったり)

より自分が分かったり

(きゅうなそっきょうでわらってしまったり)

急な即興で笑ってしまったり

(あのめいゆうがこのよをさったり)

あの名優がこの世を去ったり

(いちびょういちびょうすべてのしーんがもうとりなおせない)

一秒一秒全てのシーンがもう撮り直せない

(しあわせはおもいでとして)

幸せは思い出として

(ふるびていくよみおえただいほんや)

古びていく読み終えた台本や

(きくずれしたいしょうたちがかさなってる)

着崩れした衣装たちが重なってる

(このままでばんはつづいていく)

このまま出番は続いていく

(のこったきずもよごれも)

残った傷も汚れも

(はじたりしないでいい)

恥じたりしないでいい

(びだんだけじゃ)

美談だけじゃ

(きっとえいがをあいせないから)

きっと映画を愛せないから

(かなしいせりふがふえたのは)

悲しい台詞が増えたのは

(うれしいばめんのまえぶりだろう)

嬉しい場面の前振りだろう

(きびしいことばがくやしいのは)

厳しい言葉が悔しいのは

(ほんきになったしょうこだろう)

本気になった証拠だろう

(だいほんのどこをさがしてもない)

台本のどこを探してもない

(きみのなまえはもうかいてない)

君の名前はもう書いてない

(いくらこばんでさからっても)

いくら拒んで逆らっても

(つぎへぺーじを)

次へページを

(めくらなきゃいけないから)

めくらなきゃいけないから

(なんどもてにとるしゃしんのきみは)

何度も手に取る写真の君は

(じかんがたつたびに)

時間が経つたびに

(またきれいになった)

また綺麗になった

(たまにはいままでをさいせいしてみる)

たまには今までを再生してみる

(すなあらしでゆがんだり)

砂嵐で歪んだり

(なにもうつらなかったり)

何も映らなかったり

(きっとそれでいい)

きっとそれでいい

(このままぼくはぼくでふるびていく)

このまま僕は僕で古びていく

(わかいころのせりふをゆびでなぞっては)

若い頃の台詞を指でなぞっては

(はずかしくなったりする)

恥ずかしくなったりする

(つみあげたさくひんがくずれること)

積み上げた作品が崩れること

(ひとはそれをそうまとうと)

人はそれを走馬灯と

(よぶらしいけど)

呼ぶらしいけど

(いまのぼくがよこくへんになるような)

今の僕が予告編になるような

(ながいえいがをとることにきめたんだ)

長い映画を撮ることに決めたんだ