天庭／あさき

(あんたんたるちゅうてんへと)

暗澹たる中天へと

(のびたるひかりのはしごに)

延びたる光の梯子に

(むらがるほしくずたちが)

群がる星屑たちが

(くちぐちにさけんでいる)

口々に叫んでいる

(こころをころせ)

心を殺せ

(ふらりふらりそしらぬかおして)

ふらりふらり　そ知らぬ顔して

(しうんよりたれる)

紫雲よりたれる

(くちびるをしづめてはねまわり)

口唇をしづめて　跳ねまわり

(あうらやおいこせとはてる)

あうらや　追い越せと果てる

(まんもくのかれあかり)

「満目の枯れ明かり！」

(あなためしませとこしなえ)

あなた　召しませ　とこしなえ

(さあさあごゆるりとごらんあれとひさぐ)

「さあさあ　ごゆるりと　ご覧あれ」と鬻ぐ

(うめがえだをつきさしてえみなさり)

梅が枝を突き刺して笑みなさり

(ほらほらここでなり)

「ほらほら　ここで生り」

(ふむふむここか)

「ふむふむ　ここか」

(ここにあり)

ここに在り！

(しんぶつがわかつごぞうとろっぷを)

神仏が分かつ五臓と六腑を

(なめつくくみつつ)

舐めつ　くくみつつ

(がんかにひろがる)

眼下に広がる

(だくりゅうのきしをあらいてあんちゃく)

濁流の岸を洗ひて安着

(あかときはついにゆく)

あかときは　終に行く

(もうかえしてはくれぬはぜて)

もう帰してはくれぬ　爆ぜて

(あまぐらり)

天ぐらり！

(あおみのびておしはかる)

あをみ　延びて推し量る

(ゆきあうほしのあいのふかさ)

行き会う星の間の深さ

(おいかけていたはずの)

追いかけていたはずの

(ひかりにおわれまいごになる)

光華に追われ　迷子になる

(じゃくめつをまつしみたとうかをだき)

寂滅を待つ　凍みた灯火を抱き

(すぐあすをくもにたくしながる)

過ぐ明日を雲に託し流る

(にちりんにあくがれ)

日輪にあくがれ

(いびつにうねるかげえ)

歪にうねる影絵

(たがいのはらをえぐりあいえつにひたる)

互いの肝を抉り合い悦に浸る

(ひかりのはしごにむらがり)

光の梯子に群がり

(きょうせいをあげるほしくずたちのあいだを)

きょう声をあげる星屑たちの間を

(くろいてんめつがすりぬけていく)

黒い点滅がすり抜けていく

(やがてむすうのおおきなせんじょうの)

やがて無数の大きな線状の

(ゆうしになったそれは)

糸遊になったそれは

(うすものをはおりながらうかをとげ)

羅を羽織りながら羽化をとげ

(あはあはとたいきょをしばりつける)

あはあはと大虚を縛り付ける

(てんじつのおもりにからみつきながら)

天日の錘に絡みつきながら

(そのそくどをあげ)

その速度を上げ

(しゃくねつのかおをおおいつくしたのち)

灼熱の顔を覆い尽したのち

(さらばえたかげをひきずりながら)

さらばえた影を引きずりながら

(よぞらとどうかしきえた)

夜空と同化し　消えた

(ひゅひゅひゅるる～)

ひゅ　ひゅ　ひゅるる～

(さくふうはみええぬものをならし)

朔風は見え得ぬものを鳴らし

(こきゅうあわせおり)

呼吸合わせをり

(なまりいろのきりをまといながら)

鉛色の霧をまといながら

(だくえきをたらしてつらなるきららは)

濁液を垂らして連なるきららは

(あごにねんじゅをこすりつけ)

顎に念珠をこすりつけ

(いまかいまか)

今か！今か！

(とまつさらのやみに)

とまつさらの闇に

(はらえへとうちこむ)

祓へと打ち込む！

(かなしいなかなしいね)

かなしいな　かなしいね

(かなしいなかなしいね)

かなしいな　かなしいね

(かなしいなかなしいね)

かなしいな　かなしいね

(かたにふるぎんのささやき)

肩に降る銀のささやき

(あらあらこんなところにおもはゆいみなもとが)

「あらあら　こんなところに面映ゆい源が！」

(おとこのこおんなのこのひめごとさ)

「おとこのこ　おんなのこの秘め事さ」

(あいやーあいやいやー)

「あいやー　あいやいやー」

(まんめんでわらうふぞろいのにじは)

満面で笑う　不揃いの虹は

(たきぼうよう)

多岐茫洋

(みているか)

見ているか

(ひととしてありたくて)

ひととして　在りたくて

(つきみぶねにのって)

月見船に乗って

(こしんへむかうひとよみえるか)

湖心へ向かうひとよ　見えるか

(てんしんのつきはあまりにもとおすぎる)

天心の月はあまりにも遠すぎる

(ひらひらとまいおちた)

ひらひらと舞い落ちた

(そらのかけらがてのひらでもえて)

空の欠片が掌で燃えて

(よごれたはいになりかぜにのって)

汚れた灰になり　風にのって

(またそらへとのぼる)

又　空へと昇る

(ひかりあくがれのひかり)

光　あくがれの光

(いびつをものうくみつめあう)

歪を物憂く見つめ合う

(そのひばしらよじれよじれて)

その火柱　よじれよじれて

(ゆうひのいろほりぬ)

夕陽の色欲りぬ

(なすべきをなし)

為すべきを　為し

(きもえぐりみそらし)

肝抉り身反らし

(まいごのもぬけかかげてわらう)

迷子の蛻　掲げて笑う

(どすぐろくひろがりふきだまるゆかりに)

どす黒く広がり　吹き溜まる縁に

(なにをききなにをつたえて)

何を聞き　何を伝えて

(きさまらみえるか)

貴様ら見えるか

(あのてんどうのさきであり)

あの天道の先で在り

(としんのごうかにやかれたてを)

妬心の業火に焼かれた手を

(きぼうのたばしりおとしてはひろって)

希望のたばしり　落としては拾って

(わきめもふらずわたなめあうざまを)

脇目もふらず　内臓舐め合う様を

(ほらひらめきよ)

ほら　閃きよ

(かいまみてそのかみのひびみとどけぬ)

垣間見て其の上の　時代見届けぬ

(きえのこるほしひとつおき)

消え残る星ひとつ置き

(だれかおしえてくれ)

誰か教えてくれ

(しあわせはどこにある)

幸せは何処にある

(こうはいくづるるごとく)

光背くづるるごとく

(そらがわれている)

空が割れている

(ひとおもうゆえいわくをふむ)

ひと思ふ故　曰くを踏む

(ほしおよぎゆくそのさきに)

星　泳ぎ　行く　その先に

(さちあれ)

幸あれ

(あんたんたるちゅうてんへと)

暗澹たる中天へと

(のびたるひかりのはしごに)

延びたる光の梯子に

(むらがるほしくずたちがくちぐちにさけぶ)

群がる星屑たちが口々に叫ぶ

(しんかはいつでもきさまらのせなかをやいている)

神火はいつでも貴様らの背中を焼いている