荊姫

(けいきょくのもりこどくにおちたしろが)

荊棘の森、孤独に落ちた城が

(ちんもくのままだれのこえもきかずに)

沈黙のまま誰の声も聞かずに

(しめったゆめのつづきをうたいつづけ)

湿った夢の続きを歌い続け

(さいげつをしらぬわたしをかこっている)

歳月を知らぬ私を囲っている。

(ねむりのふちのなかささやかれたあいさえ)

眠りの淵の中、囁かれた愛さえ

(ながいこもりうたのようにきこえてしまうの)

長い子守唄のように聴こえてしまうの。

(あなたはだれなのしらないわ)

貴方は誰なの？知らないわ。

(あやまちへとてをのばしてあなたはみうしなう)

過ちへと手を伸ばして貴方は見失う。

(ふれるべきものはほかにいるはずでしょう)

触れるべきものは他に居るはずでしょう？

(わたしをゆらしたいのならあいをこめたきすをちょうだいな)

私を揺らしたいのなら愛を込めたキスを頂戴な

(くちさきだけにならないで)

口先だけにならないで。

(けいきょくのおりこどくになげくしろが)

荊棘の檻、孤独に嘆く城が

(さいげつをしるあなたをかこっている)

歳月を知る貴方を囲っている

(ねむりのふちのなかささやかれたあいさえ)

眠りの淵の中、囁かれた愛さえ

(ながいゆめのようなまどろみにのまれていく)

長い夢のような微睡みに飲まれていく。

(わたしはだれなのこたえてよ)

私は誰なの？答えてよ！

(あやまちへとつきおとしてわたしはみうしなう)

過ちへと突き落として私は見失う。

(ささったつむはまだきずあとをのこして)

刺さった紡錘はまだ傷跡を残して

(わたしのめざめがみたいならあいをこめたきすをちょうだいよ)

私の目醒めが見たいなら愛を込めたキスを頂戴よ

(すべてをけしさるまでふかく)

すべてを消し去るまで深く。

(かえりみちをいばらのさくでふさぎ)

帰り道を荊の柵で塞ぎ

(あなたをよぶこえもいばしょもなにもかもをてのとどかぬように)

貴方を呼ぶ声も居場所も何もかもを手の届かぬように

(だれのめもふれぬばしょへ)

誰の目も触れぬ場所へ

(あやまちへとてをのばしたあなたはみうしなう)

過ちへと手を伸ばした貴方は見失う

(もどるべきみちをまもるべきものすらも)

戻るべき道を守るべきものすらも。

(わたしをぬらしたいのならあいをこめたきすをちょうだいな)

私を濡らしたいのなら愛を込めたキスを頂戴な

(くちさきだけならいらない)

口先だけならいらない

(あやまちへとつきおとしてわたしはみうしなった)

過ちへと突き落として私は見失った

(ささったつむがまだゆびさきをくるしめて)

刺さった紡錘がまだ指先を苦しめて

(あなたがうけるむくいならわたしがよういしてあげるから)

貴方が受ける報いなら私が用意してあげるから

(あいをこめたきすでおこして)

愛を込めたキスで起こして