追憶

(ほのぐらいきりのなか)

仄暗い霧の中

(きえてゆくかげをみおくる)

消えて行く影を見送る

(てをふったきれいなかーぶが)

手を振った奇麗な曲線が

(いつまでもゆれてる)

いつまでも揺れてる

(うつくしいあさは)

美しい朝は

(だれかをおくるためにあるのだろう)

誰かを送る為にあるのだろう

(むねをついばむあまいほうせきを)

胸を啄む甘い宝石を

(またひとつぶのこして)

また一粒残して

(ついおくのざらりとしたてざわりにゆびをはわせて)

追憶のざらりとした手触りに指を這わせて

(きらめいたまひるのほしをしずかによるへおとそう)

きらめいた真昼の星を静かに夜へ落とそう

(たわむれるきおくのなかなにもとどかない)

戯れる記憶の中何も届かない

(えいえんとよくにたゆめのとりでに)

永遠とよく似た夢の砦に

(「あのひ」のかぜがふく)

「あの日」の風が吹く

(ひたいをぬけていくみがかれたじかんのわな)

額を抜けて行く磨かれた時間の罠

(ついおくのふかくもうなにもいらない)

追憶の深くもう何もいらない

(かおのないこえとまぶたをすべるみえないゆびさき)

顔の無い声と瞼を滑る見えない指先

(やさしさだけをつなぎあわせたあなたは)

優しさだけを繋ぎ合わせた貴方は

(なまえももたない)

名前も持たない

(ｍｅｈｅｙａ　ｍａｈｅｙａ)

meheya maheya

(ｓａｒｉａ　ｅｅｙａ　ｈａ　ｍａ　ｈａｈａ)

saria eeya ha ma haha

(ｓａｍａｒｉｔｉ　ｍｉａ　ｈｅ　ｈｅｙａ)

samariti mia he heya

(ｓａｍａｒｉｔｉａ)

samaritia

(ａｓａ　ｈａ)

asa ha

(びんのなかにあるそらはもうすぐひぐれて)

瓶の中にある空はもうすぐ日暮れて

(きんいろのといきをただくりかえす)

黄金色の吐息をただ繰り返す

(いちばんしあわせなときをさがしたら)

一番幸せな時を探したら

(よくばりなこどもはどこまでかえるのだろう)

欲張りな子供は何処まで還るのだろう

(もりのほとりにあるにれのきのしたで)

森のほとりにある楡の木の下で

(あいのしぐさだけをただくりかえす)

愛の仕草だけをただ繰り返す

(なつのかぜすぎゆくひたいをぬけていく)

夏の風過ぎ行く額を抜けて行く

(おとのないそらからふることばのないうた)

音の無い空から降ることばの無いうた

(もうなにもいらない)

もう何もいらない

(うつくしいきおくのくにで)

美しい記憶の国で

(ついおくのうたげをはじめよう)

追憶の宴を始めよう