怪電話

(ひとりぼっちだっておもいしる)

独りぼっちだって思い知る

(でんわせんをおよいだひとりごと)

電話線を泳いだ独り言

(ひとりぼっちだからさがしている)

独りぼっちだから探している

(ぼくのでんわとってくれるきみを)

僕の電話取ってくれる君を

(きみにだけはどうかきいてほしい)

君にだけはどうか聴いて欲しい

(でんわせんをおよいだひとりごと)

電話線を泳いだ独り言

(きみもそう、はさみをにぎっている)

君もそう、鋏を握っている

(ひとごみではさみをにぎっている)

人混みで鋏を握っている

(うわのそら、にぶったはをならす)

上の空、鈍った刃を鳴らす

(いつのまにかはがさびついている)

いつの間にか刃が錆び付いている

(ゆびをきったきずのいたみさえ)

指を切った傷の痛みさえ

(いつのまにかぼくらわすれている)

いつの間にか僕ら忘れている

(とじたままはさみをぬいつける)

閉じたまま鋏を縫い付ける

(ぼくのてをみてしまったきみの)

僕の手を見てしまった君の

(すすりないたこえでおもいだす)

啜り泣いた声で思い出す

(しんじきってしまったでんわごし)

信じ切ってしまった電話越し

(にじむばってんのいろ)

滲む罰点の色

(はさみはさびついていた)

鋏は錆び付いていた

(さあはりをのめ)

さあ針を飲め

(ないてくやんでよ)

泣いて悔やんでよ

(さんとにとひゃくごじゅういち)

三ト二ト百五十一

(われたこころ)

割レタ心

(しこうのれっとうかん)

至高ノ劣等感

(ただうらんでいる)

ただ怨んでいる

(うぶなぼくを)

初心な僕を

(きってしまったでんわごしに)

切ってしまった電話越しに

(いけるもふくのゆり)

活ける喪服の百合

(えらんだそのひとりをがくにかざれ)

選んだその独りを額に飾れ

(わらってほしいな)

嘲笑って欲しいな

(さんとにとひゃくごじゅういち)

三ト二ト百五十一

(われたこころ)

割レタ心

(いぜんとしてせいかん)

依然トシテ静閑

(ただしんじている)

ただ信じている

(ゆきのおとを)

雪の音を

(あさくきってしまったゆびさきに)

浅く切ってしまった指先に

(にじむばってんのいろでうるんだそのひとみを)

滲む罰点の色で潤んだその瞳を

(といだはさみにうつしてみたいんだ)

研いだ鋏に映して視たいんだ

(さんとにとひゃくごじゅういち)

三ト二ト百五十一

(かけたこころ)

欠ケタ心

(むげんなりぎそうかん)

無限ナリ蟻走感

(まだしんじている)

まだ信じている

(かえすひかりを)

反す光を