閻魔時の帰り方

(やあやおじょうさんどこいくの)

やあやお嬢さんどこいくの

(こんなゆうぐれにまいごかい)

こんな夕暮れに迷子かい

(ここらはさいきんよくないうわさ)

ここらは最近よくない噂

(ひきかえせかえれるうちに)

引き返せ帰れるうちに

(あららおじょうさんどうしたの)

あららお嬢さんどうしたの

(あんまりむしされるとかなしいな)

あんまり無視されると悲しいな

(さむけのしょうたいおれのめをみな)

寒気の正体俺の目を見な

(ここからさきはかえせないぞ)

ここから先は返せないぞ

(おどろかないとはおどろいた)

驚かないとは驚いた

(そのにごったまなこのりゆうはなんだ)

その濁った眼の理由はなんだ

(くらやみにひとりとひとつ)

暗闇に一人と一つ

(このよからきえたいの)

この世から消えたいの

(じゃあさんざんなじんせいをのろいながら)

じゃあ散々な人生を呪いながら

(ひとつじごくへあるいていこう)

ひとつ地獄へ歩いて行こう

(こどく)

孤独

(ぞうお)

憎悪

(けんお)

嫌悪

(しっと)

嫉妬

(すべてを)

すべてを

(このよにおいてはいけないが)

この世においてはいけないが

(いたみをあいせるようになって)

痛みを愛せるようになって

(おれたちとおなじになろう)

俺たちと同じになろう

(そしたらきっともう)

そしたらきっともう

(きえたくないぜ)

消えたくないぜ

(なあおじょうさんいいかげん)

なぁ、お嬢さんいい加減

(こわがったっていいだろうよ)

怖がったっていいだろうよ

(これじゃあしょうばいあがったり)

これじゃあ商売上がったり

(もうかえれないのにずいぶんだな)

もう帰れないのに随分だな

(はちだいじごくもまるでゆうえんち)

八大地獄もまるで遊園地

(あとのまつりなどしらないようだ)

後の祭りなど知らないようだ

(つぎへむかうよとてをつながれて)

次へ向かうよと手をつながれて

(じごくのさたもふたりしだいね)

地獄の沙汰も二人次第ね

(さいあくなじんせいをわらいながら)

最悪な人生をわらいながら

(ふたりじごくできもだめし)

二人地獄で肝試し

(ひとつ)

一つ

(ふたつ)

二つ

(みっつ)

三つ

(よっつ)

四つ

(かぞえりゃ)

数えりゃ

(うつつじゃあじわえぬこうよう)

うつつじゃ味わえぬ高揚

(おまえもこっちにおちといで)

お前もこっちに墜ちといで

(そんなこといえやしないが)

そんなこと言えやしないが

(そしたらずっともう)

そしたらずっともう

(ひとりじゃないぜ)

独りじゃないぜ

(あちらとこちらのわかれみち)

あちらとこちらの分かれ道

(さあじごくめぐりもこれでおしまい)

さあ地獄めぐりもこれでおしまい

(このてはなしてうまれかわれたら)

この手離して生まれ変われたら

(つぎこそしあわせに)

次こそ幸せに

(なんてな)

なんてな

(ほらさっさといけよ)

ほらさっさと行けよ

(もういいわにんげんになれなくても)

もういいわ人間に成れなくても

(てをひかれてまっさかさま)

手を引かれて真っ逆さま

(さびしさ)

寂しさ

(えいえんも)

永遠も

(きっと)

きっと

(すべてを)

全部を

(ふたりでひとつをたべようよ)

二人で一つを食べようよ

(おまえがわらえるのならば)

お前が笑えるのならば

(そばにいてくれるのなら)

そばにいてくれるのなら

(そしたらきっともう)

そしたらきっともう

(さびしくないな)

寂しくないな

(でもからすがなくからもう)

でも鴉が鳴くからもう

(おかえりよ)

お帰りよ