隅田川夏恋歌

(くちびるなれないべにさしてあなたがまつにほんばしへ)

くちびる慣れない紅さして貴方が待つ日本橋へ

(おねえさまゆずりのおふるのゆかたすこしたけがみじかすぎて)

お姉様譲りのお古の浴衣少し丈が短すぎて

(あわいしぼりゆうがおのもよう)

淡い絞り夕顔の模様

(よくにあうよといいながらもあなたわらいこらえてる)

「よく似合うよ」と言いながらも貴方笑いこらえてる

(ひとのなみみぎひだりさけながらあるくあなたのうしろ)

人の波右左避けながら歩く貴方の後ろ

(まるですずめみたいにちょこまかついていくわたしをわすれないで)

まるで雀みたいにチョコマカついていく私を忘れないで

(あなたとけいみてしんぱいばかり)

貴方時計見て心配ばかり

(あさくさでかったあめいろのかみかざりにきがついて)

浅草で買った飴色の髪飾りに気がついて

(さきゆくあなたのうしろすがたどうにもつまらぬわたしのとなり)

先行く貴方の後ろ姿どうにもつまらぬ私の隣

(ふくれっつらでからころからころあしばやにいっしゃくいっすんちかづいて)

膨れっ面でカラコロカラコロ足早に一尺一寸近づいて

(ゆらりゆらりとはしるちかてつにゆられてふいにせなかおされて)

ユラリユラリと走る地下鉄に揺られて不意に背中押されて

(おもわずうでにつかまりうれしはずかしこのままでいきましょすみだがわ)

思わず腕につかまり嬉し恥かしこのままでいきましょ隅田川

(きらきらみなもにうつるもえるひかりのあかやあおやむらさき)

キラキラ水面に映る燃える光の赤や青や紫

(むねをゆらすごうおんよぞらにさきますいっしゃくさんしゃくはじけた)

胸を揺らす轟音夜空に咲きます一尺三尺弾けた

(みあげてみとれてとけたいちごかきごおりながれてあしぬらして)

見上げて見惚れて溶けた苺カキ氷流れて足濡らして

(はんかちだしふいてくれたやさしさうれしこっちをみないでよねすみだがわ)

ハンカチ出し拭いてくれた優しさ嬉しこっちを見ないでよね隅田川

(よぞらにさくほのおのはな)

夜空に咲く炎の華