ウツロ

(とおくとおくむこうまでつたううすやみ)

遠く遠く　向こうまで伝う薄闇

(こどくはきらいでした)

孤独は嫌いでした

(よわくよわくみゃくうつにぶいいたみは)

弱く弱く　脈打つ鈍い痛みは

(たいりゅうするおれんじにかわる)

滞留するオレンジに変わる

(ぎこちないこきゅうのえんちょうじゆうがほしかった)

ぎこちない呼吸の延長　自由が欲しかった

(あわいあわいゆうがとうきのうみたゆめ)

淡い淡い誘蛾灯　昨日みた夢

(あいにさからってはしりだすとうめいなこえがわらう)

愛に逆らって走り出す　透明な声が笑う

(てんしをせおってにげるのはこんなんだろう)

天使を背負って逃げるのは困難だろう

(なんじゅうのひあいとうねりめいていのがんかにひろがる)

何十の悲哀とうねり　酩酊の眼下に広がる

(ふいにたれおちたきおくから)

不意に垂れ落ちた記憶から

(くさってしまうよ)

腐ってしまうよ

(ふかくふかくささったえんさとながしめ)

深く深く　刺さった怨嗟と流し目

(りくつはきらいでした)

理屈は嫌いでした

(よわくよわくみゃくうつそのひかりを)

弱く弱く　脈打つその光を

(しんぱんするくろいきりきみがわらう)

侵犯する黒い霧　君が笑う

(おわらないゆめ)

終わらない夢

(さいごにのこったさびしさをこっけいなうそでかざる)

最後に残った寂しさを滑稽な嘘で飾る

(うすらわらったうつろなめをよごしても)

薄ら笑った虚ろな眼を汚しても

(あいにからまってにじむよるとうめいなこえがわらう)

愛に絡まって滲む夜　透明な声が笑う

(ぜんぶをせおってにげるのはつかれたな)

全部を背負って逃げるのは疲れたな

(ちこうせいのふはいしゅうみあげたそらねえとまんないよ)

遅効性の腐敗臭　見上げた空　ねえ　止まんないよ

(しょけいだいでゆがんでいるてんしがまたさけんでいる)

処刑台で歪んでいる天使が　また　叫んでいる

(むひょうじょうなうたごえにみたされたらもうさめない)

無表情な歌声に満たされたら　もう　覚めない

(なんどもすがったきおくまで)

何度も縋った記憶まで

(くさってしまうよ)

腐ってしまうよ