吉田、家出するってよ

(かれはいうのろまなとけいだ)

彼は言う「ノロマな時計だ」

(はりはすうみりだけうごいた)

針は数ミリだけ動いた

(かれはあきたぜともらして)

彼は「飽きたぜ」と漏らして

(めろんぱんをすこしのこした)

メロンパンを少し残した

(つくえにいれたてがみはこれで)

机に入れた手紙はこれで

(きゅうつうめになりました)

九通目になりました

(まだへんじはなくきょうは)

まだ返事はなく今日は

(まっています)

待っています

(かれのせかいをのぞきたいのに)

彼の世界を覗きたいのに

(しせんがあうことなくて)

視線が合うことなくて

(てれぱしーおくればしんそう)

テレパシー送れば深層

(わかるかしら)

分かるかしら

(じょにーだけがあいつのこと)

ジョニーだけがアイツのこと

(きづいていた)

気づいていた

(あしたがけっこうのときなんだと)

明日が決行の時なんだと

(とくべつかけることばもなかった)

特別かける言葉もなかった

(さいふにあったごせんえんをわたした)

財布にあった五千円を渡した

(のろまなはりかわらず)

ノロマな針変わらず

(しらぬさんじゅうくのひとさま)

知らぬ39の他人様

(もうもくにうごきだす)

盲目に動き出す

(かわるよんじゅうばんめなにさま)

変わる40番目何様

(かれはいうのんきなとけいだ)

彼は言う「ノンキな時計だ」

(はりはすうみりだけうごいた)

針は数ミリだけ動いた

(かれはあきたぜともらして)

彼は「飽きたぜ」と漏らして

(かれーぱんをすこしのこした)

カレーパンを少し残した

(かばんにいれたてがみはこれで)

鞄に入れた手紙はこれで

(じゅっつうめになりました)

十通目になりました

(わたせるひがくるまでまています)

渡せる日がくるまで待ています

(はいごにおくるしせんのはずが)

背後に送る視線のはずが

(そこにはなんにもなくて)

そこには何にもなくて

(りょうてをのばしてみても)

両手を伸ばしてみても

(ふれられない)

触れられない

(じょにーだけがあいつのこと)

ジョニーだけがアイツのこと

(わかってた)

分かってた

(せかいをそのめでたしかめたいと)

世界をその目で確かめたいと

(ほんとはかけることばさがしてた)

ほんとはかける言葉探してた

(くちびるかみしめうらやましさのみこんだ)

唇噛みしめ羨ましさ飲み込んだ

(せいかいだれもわからず)

正解誰も分からず

(しらぬさんじゅうくのひとさま)

知らぬ39の他人様

(とうとつにあせりだす)

唐突に焦り出す

(かわるよんじゅうばんめおれさま)

変わる40番目「俺」様

(かれはもういえにかえらない)

彼はもう家に帰らない

(はるがもうむかえにきていた)

春がもう迎えに来ていた

(さきにいくぜとのこして)

「先に行くぜ」と残して

(てがみとごせんえんにぎりしめた)

手紙と五千円握り締めた

(でんしゃのりかえて)

電車乗り換えて

(おなかもそのたびへってく)

お腹もその度減ってく

(のこしたぱんのあじすこしおもいだす)

残したパンの味少し思い出す

(たべときゃよかった)

「食べときゃ良かった」

(じょにーとちぇりー・ｂはしんじてた)

ジョニーとチェリー・Bは信じてた

(せかいはきぼうがつながるのだと)

世界は希望が繋がるのだと

(おいかけなくたっていいんだって)

追いかけなくたっていいんだって

(なまえをきくひも)

名前を聞く日も

(いつかまたくるでしょう)

いつかまたくるでしょう

(のろまなおれたかわらい)

ノロマな「俺」高笑い

(いちおくとにせんまんにんさま)

一億と二千万人様

(せかいはうごきだす)

世界は動き出す

(こうせいがさころがせおれさま)

後世が為転がせ俺様

(きみはいうのんきなとけいだ)

君は言う「ノンキな時計だ」

(はりはすうみりだけうごいた)

針は数ミリだけ動いた

(きみはあきたぜともらして)

君は「飽きたぜ」と漏らして

(めろんぱんひとくちかじじった)

メロンパン一口噛じった