お寝み

(おかえりをいおう)

おかえりを言おう。

(であいかたをほりおこすには)

出会い方を掘り起こすには

(それなりのつきひがたった)

それなりの月日が経った。

(おもえばおぼこいせのびだった)

思えば、おぼこい背伸びだった。

(じすいをしないあなたのりょうりはやけにこっていてわらいました)

自炊をしないあなたの料理はやけに凝っていて笑いました。

(せいかくがよくあらわれています)

性格がよく表れています。

(けっぺきなあじつけにあいがかくれていないよ)

潔癖な味付けに愛が隠れていないよ。

(おやすみでいちにちがおわること)

お寝みで一日が終わること。

(どんなにすてきなことでしょう)

どんなに素敵なことでしょう。

(よどおしはなすのもねているのとかわらないあいづちも)

夜通し話すのも、寝ているのと変わらない相槌も、

(いつかとくべつじゃなくなるのが)

いつか特別じゃなくなるのが

(それはそれでたのしみです)

それはそれで、楽しみです。

(うそをはくのがへたきづかいのほうふさ)

嘘を吐くのが下手。気遣いの豊富さ。

(そういえばじょうずなうそもあった)

そういえば、上手な嘘もあった。

(さぷらいずからのぷろぽーず)

サプライズからのプロポーズ。

(じゃあわたしからもひとつ)

じゃあ、私からもひとつ。

(しゅうまつはあえてことばをかりるなら)

週末は、あえて言葉を借りるなら

(いいでーとをくみたてましょう)

「良いデート」を組み立てましょう。

(さくらにはやっているあなたをもういちどみたっていいんだよ)

桜に逸っているあなたをもう一度見たっていいんだよ。

(こんどこそゆかたをきておなじいえにかえろう)

今度こそ浴衣を着て同じ家に帰ろう。

(あいしそこねたあなたいがいのだれかにきげんをそこねた)

愛し損ねた、あなた以外の誰かに機嫌を損ねた、

(そんなかこもきいてくれた)

そんな過去も聞いてくれた。

(ききそびれたことをていねいにふみながら)

聞きそびれたことを丁寧に踏みながら

(ほはばをびちょうせつするわたしたちです)

歩幅を微調節する私たちです。

(もはやげんけいのないあだな)

もはや原型のないあだ名。

(しわのふえていくてのひらゆるくなったゆびわ)

皺の増えていく掌、緩くなった指輪。

(そしてどれもこれもまもりたいのは)

そして、どれもこれも守りたいのは

(わがままじゃなくてほしいままでして)

我侭じゃなくて、恣(ほしいまま)でして、

(うらやましいのはあなたのそのすなおさ)

羨ましいのは、あなたのその素直さ。

(かわらないでいてほしいのはそのわかりやすさ)

変わらないでいてほしいのは、そのわかりやすさ。

(こころからわらうあなたにわたしがよくにあうよ)

心から笑うあなたに、私がよく似合うよ。

(わたしがいることをみていてね)

私が居ることを見ていてね。

(おやすみ)

おやすみ。