夏目漱石「こころ」3-51

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投稿者投稿者たけしいいね0お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-51
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
8:点頭く(うなずく)
10;後れ(おくれ)
14:真直(まっすぐ)
24:疳違(かんちがい)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
少し長めです。

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問題文

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(にじゅうろく)

二十六

(「けいとわたくしはおなじかにおりながら、せんこうのがくもんがちがっていましたから、)

「Kと私は同じ科に居りながら、専攻の学問が違っていましたから、

(しぜんでるときやかえるときにちそくがありました。)

自然出る時や帰る時に遅速がありました。

(わたくしのほうがはやければ、ただかれのくうしつをとおりぬけるだけですが、)

私の方が早ければ、ただ彼の空室を通り抜けるだけですが、

(おそいとかんたんなあいさつをしてじぶんのへやへはいるのをれいにしていました。)

遅いと簡単な挨拶をして自分の部屋へ這入るのを例にしていました。

(けいはいつものめをしょもつからはなして、ふすまをあけるわたくしをちょっとみます。)

Kはいつもの眼を書物からはなして、襖を開ける私を一寸見ます。

(そうしてきっといまかえったのかといいます。)

そうしてきっと今帰ったのかと云います。

(わたくしはなにもこたえないでうなずくこともありますし、)

私は何も答えないで点頭く事もありますし、

(あるいはただ「うん」とこたえていきすぎるばあいもありました。)

或はただ『うん』と答えて行き過ぎる場合もありました。

(あるひわたくしはかんだにようがあって、かえりがいつもよりずっとおくれました。)

ある日私は神田に用があって、帰りが何時もよりずっと後れました。

(わたくしはいそぎあしにもんぜんまできて、こうしをがらりとあけました。)

私は急ぎ足に門前まで来て、格子をがらりと開けました。

(それとどうじに、わたくしはおじょうさんのこえをきいたのです。)

それと同時に、私は御嬢さんの声を聞いたのです。

(こえはたしかにけいのへやからでたとおもいました。)

声は慥にKの室から出たと思いました。

(げんかんからまっすぐにいけば、ちゃのま、おじょうさんのへやとふたつつづいていて、)

玄関から真直に行けば、茶の間、御嬢さんの部屋と二つ続いていて、

(それをひだりへおれると、けいのへや、わたくしのへや、というまどりなのですから、)

それを左へ折れると、Kの室、私の室、という間取なのですから、

(どこでだれのこえがしたくらいは、ひさしくやっかいになっているわたくしにはよくわかるのです。)

何処で誰の声がした位は、久しく厄介になっている私には能く分るのです。

(わたくしはすぐこうしをしめました。)

私はすぐ格子を締めました。

(するとおじょうさんのこえもすぐやみました。)

すると御嬢さんの声もすぐ已みました。

(わたくしがくつをぬいでいるうち、ーーわたくしはそのじぶんから)

私が靴を脱いでいるうち、ーー私はその時分から

(はいからでてかずのかかるあみあげをはいていたのですが、)

ハイカラで手数のかかる編上を穿いていたのですが、

など

(ーーわたくしがこごんでくつひもをといているうち、)

ーー私がこごんで靴紐を解いているうち、

(けいのへやではだれのこえもしませんでした。)

Kの部屋では誰の声もしませんでした。

(わたくしはへんにおもいました。)

私は変に思いました。

(ことによると、わたくしのかんちがいかもしれないとかんがえたのです。)

ことによると、私の疳違かも知れないと考えたのです。

(しかしわたくしがいつものとおりけいのへやをぬけようとして、ふすまをあけると、)

然し私がいつもの通りKの室を抜けようとして、襖を開けると、

(そこにふたりはちゃんとすわっていました。)

其所に二人はちゃんと坐っていました。

(けいはれいのとおりいまかえったかといいました。)

Kは例の通り今帰ったかと云いました。

(おじょうさんも「おかえり」とすわったままであいさつしました。)

御嬢さんも『御帰り』と坐ったままで挨拶しました。

(わたくしにはきのせいかそのかんたんなあいさつがすこしかたいようにきこえました。)

私には気の所為かその簡単な挨拶が少し硬いように聞こえました。

(どこかでしぜんをふみはずしているようなちょうしとして、わたくしのこまくにひびいたのです。)

何処かで自然を踏み外しているような調子として、私の鼓膜に響いたのです。

(わたくしはおじょうさんに、おくさんはとたずねました。)

私は御嬢さんに、奥さんはと尋ねました。

(わたくしのしつもんにはなんのいみもありませんでした。)

私の質問には何の意味もありませんでした。

(いえのうちがへいじょうよりなんだかひっそりしていたからきいてみただけのことです。)

家のうちが平常より何だかひっそりしていたから聞いて見ただけの事です。

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