夏目漱石「こころ」3-82
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。
オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
7:私語いて(ささやいて)
10:窘める(たしなめる)
19:真向(まむき)
20:脊(せい)の高い
28:食い付く(くらいつく)
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | berry | 8906 | 神 | 8.9 | 99.7% | 160.1 | 1430 | 4 | 28 | 2024/08/29 |
2 | ヤス | 8160 | 神 | 8.4 | 96.7% | 171.2 | 1446 | 49 | 28 | 2024/08/29 |
3 | BEASTななせ | 6818 | S++ | 7.1 | 95.3% | 208.4 | 1493 | 72 | 28 | 2024/10/28 |
4 | デコポン | 6721 | S+ | 6.9 | 97.1% | 207.4 | 1436 | 42 | 28 | 2024/10/01 |
5 | すもさん | 6204 | A++ | 6.4 | 96.0% | 233.7 | 1512 | 62 | 28 | 2024/10/07 |
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問題文
(よんじゅうに)
四十二
(「わたくしはけいとならんであしをはこばせながら、)
「私はKと並んで足を運ばせながら、
(かれのくちをでるつぎのことばをはらのなかであんにまちうけました。)
彼の口を出る次の言葉を腹の中で暗に待ち受けました。
(あるいはまちぶせといったほうがまだてきとうかもしれません。)
或は待ち伏せと云った方がまだ適当かも知れません。
(そのときのわたくしはたといけいをだましうちにしてもかまわないくらいにおもっていたのです。)
その時の私はたといKを騙し打ちにしても構わない位に思っていたのです。
(しかしわたくしにもきょういくそうとうのりょうしんはありますから、もしだれかわたくしのそばへきて、)
然し私にも教育相当の良心はありますから、もし誰か私の傍へ来て、
(おまえはひきょうだとひとことささやいてくれるものがあったなら、)
御前は卑怯だと一言私語いてくれるものがあったなら、
(わたくしはそのしゅんかんに、はっとわれにたちかえったかもしれません。)
私はその瞬間に、はっと我に立ち帰ったかも知れません。
(もしけいがそのひとであったなら、わたくしはおそらくかれのまえにせきめんしたでしょう。)
もしKがその人であったなら、私は恐らく彼の前に赤面したでしょう。
(ただけいはわたくしをたしなめるにはあまりにしょうじきでした。)
ただKは私を窘めるには余りに正直でした。
(あまりにたんじゅんでした。)
余りに単純でした。
(あまりにじんかくがぜんりょうだったのです。)
余りに人格が善良だったのです。
(めのくらんだわたくしは、そこにけいいをはらうことをわすれて、)
目のくらんだ私は、其所に敬意を払う事を忘れて、
(かえってそこにつけこんだのです。)
却って其所に付け込んだのです。
(そこをりようしてかれをうちたおそうとしたのです。)
其所を利用して彼を打ち倒そうとしたのです。
(けいはしばらくして、わたくしのなをよんでわたくしのほうをみました。)
Kはしばらくして、私の名を呼んで私の方を見ました。
(こんどはわたくしのほうでしぜんとあしをとめました。)
今度は私の方で自然と足を留めました。
(するとけいもとまりました。)
するとKも留まりました。
(わたくしはそのときやっとけいのめをまむきにみることができたのです。)
私はその時やっとKの眼を真向に見る事が出来たのです。
(けいはわたくしよりせいのたかいおとこでしたから、)
Kは私より脊の高い男でしたから、
(わたくしはいきおいかれのかおをみあげるようにしなければなりません。)
私は勢い彼の顔を見上げるようにしなければなりません。
(わたくしはそうしたたいどで、おおかみのごときこころをつみのないひつじにむけたのです。)
私はそうした態度で、狼の如き心を罪のない羊に向けたのです。
(「もうそのはなしはやめよう」とかれがいいました。)
『もうその話は止めよう』と彼が云いました。
(かれのめにもかれのことばにもへんにひつうなところがありました。)
彼の眼にも彼の言葉にも変に悲痛なところがありました。
(わたくしはちょっとあいさつができなかったのです。)
私は一寸挨拶が出来なかったのです。
(するとけいは、「やめてくれ」とこんどはたのむようにいいなおしました。)
するとKは、『止めてくれ』と今度は頼むように云い直しました。
(わたくしはそのときかれにむかってざんこくなこたえをあたえたのです。)
私はその時彼に向って残酷な答を与えたのです。
(おおかみがすきをみてひつじののどぶえへくらいつくように。)
狼が隙を見て羊の咽喉笛へ食い付くように。