夏目漱石「こころ」3-109

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投稿者投稿者たけしいいね2お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-109
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
9:燻べる(くべる)
13:腸(はらわた)
22:括ッ付いて(くっついて)
34:明白さま(あからさま)
36:調戯い(からかい)ました
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 8461 8.5 99.0% 223.6 1911 19 36 2024/09/13
2 subaru 8429 8.6 97.9% 222.2 1914 41 36 2024/09/13
3 HAKU 7980 8.3 95.8% 231.3 1929 83 36 2024/09/14
4 □「いいね」する 7920 8.1 97.6% 237.6 1929 47 36 2024/09/13
5 ヤス 7189 7.7 93.6% 249.8 1927 131 36 2024/09/13

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問題文

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(わたくしはこんにちにいたるまで)

私は今日に至るまで

(すでににさんどうんめいのみちびいていくもっともらくなほうこうへすすもうとしたことがあります。)

既に二三度運命の導いて行く最も楽な方向へ進もうとした事があります。

(しかしわたくしはいつでもさいにこころをひかされました。)

然し私は何時でも妻に心を惹かされました。

(そうしてそのさいをいっしょにつれていくゆうきはむろんないのです。)

そうしてその妻を一所に連れて行く勇気は無論ないのです。

(さいにすべてをうちあけることのできないくらいなわたくしですから、)

妻に凡てを打ち明ける事の出来ない位な私ですから、

(じぶんのうんめいのぎせいとして、さいのてんじゅをうばうなどというてあらなしょさは、)

自分の運命の犠牲として、妻の天寿を奪うなどという手荒な所作は、

(かんがえてさえおそろしかったのです。)

考えてさえ恐ろしかったのです。

(わたくしにわたくしのしゅくめいがあるとおり、さいにはさいのめぐりあわせがあります。)

私に私の宿命がある通り、妻には妻の廻り合せがあります。

(ふたりをひとたばにしてひにくべるのは、)

二人を一束にして火に燻べるのは、

(むりというてんからみても、いたましいきょくたんとしかわたくしにはおもえませんでした。)

無理という点から見ても、痛ましい極端としか私には思えませんでした。

(どうじにわたくしだけがいなくなったあとのさいをそうぞうしてみるといかにもふびんでした。)

同時に私だけが居なくなった後の妻を想像して見ると如何にも不憫でした。

(ははのしんだとき、これからよのなかでたよりにするものはわたくしよりほかになくなった)

母の死んだ時、これから世の中で頼りにするものは私より外になくなった

(といったかのじょのじゅっかいを、わたくしははらわたにしみこむようにきおくさせられていたのです。)

と云った彼女の述懐を、私は腸に沁み込むように記憶させられていたのです。

(わたくしはいつもちゅうちょしました。)

私はいつも躊躇しました。

(さいのかおをみて、よしてよかったとおもうこともありました。)

妻の顔を見て、止して可かったと思う事もありました。

(そうしてまたじっとすくんでしまいます。)

そうして又凝と竦んでしまいます。

(そうしてさいからときどきものたりなさそうなめでながめられるのです。)

そうして妻から時々物足りなさそうな眼で眺められるのです。

(きおくしてください。)

記憶して下さい。

(わたくしはこんなふうにしていきてきたのです。)

私はこんな風にして生きて来たのです。

(はじめてあなたにかまくらであったときも、あなたといっしょにこうがいをさんぽしたときも、)

始めて貴方に鎌倉で会った時も、貴方と一所に郊外を散歩した時も、

など

(わたくしのきぶんにたいしたかわりはなかったのです。)

私の気分に大した変りはなかったのです。

(わたくしのうしろにはいつでもくろいかげがくっついていました。)

私の後には何時でも黒い影が括ッ付いていました。

(わたくしはさいのために、いのちをひきずってよのなかをあるいていたようなものです。)

私は妻のために、命を引きずって世の中を歩いていたようなものです。

(あなたがそつぎょうしてくにへかえるときもおなじことでした。)

貴方が卒業して国へ帰る時も同じ事でした。

(くがつになったらまたあなたにあおうとやくそくしたわたくしは、)

九月になったらまた貴方に会おうと約束した私は、

(うそをついたのではありません。)

嘘を吐いたのではありません。

(まったくあうきでいたのです。)

全く会う気でいたのです。

(あきがさって、ふゆがきて、そのふゆがつきても、きっとあうつもりでいたのです。)

秋が去って、冬が来て、その冬が尽きても、きっと会う積りでいたのです。

(するとなつのあついさかりにめいじてんのうがほうぎょになりました。)

すると夏の暑い盛りに明治天皇が崩御になりました。

(そのときわたくしはめいじのせいしんがてんのうにはじまっててんのうにおわったようなきがしました。)

その時私は明治の精神が天皇に始まって天皇に終わったような気がしました。

(もっともつよくめいじのえいきょうをうけたわたくしどもが、)

最も強く明治の影響を受けた私どもが、

(そのあとにいきのこっているのはひっきょうじせいおくれだというかんじが)

その後に生き残っているのは必竟時勢遅れだという感じが

(はげしくわたくしのむねをうちました。)

烈しく私の胸を打ちました。

(わたくしはあからさまにさいにそういいました。)

私は明白さまに妻にそう云いました。

(さいはわらってとりあいませんでしたが、なにをおもったのか、)

妻は笑って取り合いませんでしたが、何を思ったものか、

(とつぜんわたくしに、ではじゅんしでもしたらよかろうとからかいました。)

突然私に、では殉死でもしたら可かろうと調戯いました。

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