セルフィッシュ／美古途

(みたくもないわたしでみたした)

見たくもない わたしで満たした

(ふるびたきおくのすいそう)

古びた記憶の水槽

(でぐちもないまままわりまわって)

出口も無いまま 回り回って

(いつまでもよどみつづけている)

いつまでも淀み続けている

(かなしさをみおとしてしまうのは)

悲しさを見落としてしまうのは

(それだけくらさにめがなれただけ)

それだけ暗さに目が慣れただけ

(せかいも、にんげんもきっとそういうもんだって)

世界も、人間もきっとそういうもんだって

(かげだけをきりはなせないみたいに)

影だけを切り離せないみたいに

(にげたくてもにげられない)

逃げたくても逃げられない

(じぶんをかかえてはしっている)

自分を抱えて走っている

(なにもわからないの)

何もわからないの

(ふりそそぐゆめに)

降り注ぐ夢に

(わらい、うたっていたかこは)

笑い、歌っていた過去は

(ぬれるはねのように)

濡れる羽のように

(わたしをひきとめるんだ)

わたしを引き留めるんだ

(とおくなって、みうしなったちいさなあいを)

遠くなって、見失った小さな愛を

(もういちどねがってみてもいいかな)

もう一度願ってみてもいいかな

(むかしみたいにわらってみてもいいかな)

昔みたいに笑ってみてもいいかな

(むきあえばいやなところばかりがめについて)

向き合えば嫌な所ばかりが目について

(ふとめをとじてしまう)

ふと目を閉じてしまう

(そうやって、そのまわりにあるおもいでまで)

そうやって、その周りにある思い出まで

(なかったことにしたんだ)

無かったことにしたんだ

(そしてかこはうろこのように)

そして過去は鱗のように

(いくつもかさなりあい)

いくつも重なり合い

(おくびょうなさかなになって)

臆病なサカナになって

(くらく、ふかいよるのそこをおよぐんだ)

暗く、深い夜の底を泳ぐんだ

(ばつをつけたあやまちも)

バツをつけた過ちも

(ひとりよがりなおもいもぜんぶのみこんで)

独りよがりな想いも全部飲み込んで

(もちぬしのかえりをまっている)

持ち主の帰りを待っている

(たいせつなわすれものをかかえて)

大切な忘れ物を抱えて

(わたしはわたしでせいいっぱいで)

わたしはわたしで精一杯で

(だれかのためなんてがらじゃなくて)

誰かのためなんて柄じゃなくて

(おとなになりきれない)

大人になりきれない

(きおくのさかなばかりがそだっていく)

記憶のサカナばかりが育っていく

(おいかけまわしたはずのじかんに)

追いかけ回したはずの時間に

(いつしかおいかけまわされた)

いつしか追いかけ回された

(ただたちどまって)

ただ立ち止まって

(ふりむくだけでよかったのに)

振り向くだけでよかったのに

(もうごまかさないで)

もう誤魔化さないで

(とりつくろっても)

取り繕っても

(かこがきえることはないから)

過去が消えることはないから

(つらくても、つれていくんだ)

辛くても、連れて行くんだ

(なさけなくて、めをそらした)

情けなくて、目を逸らした

(ほんとうのわたしを)

本当のわたしを

(もういちどもうにどと、にげたくない)

もう一度 もう二度と、逃げたくない

(ひかりになって)

光になって

(わらい、うたっていたかこは)

笑い、歌っていた過去は

(ゆれるはなのように)

揺れる花のように

(わたしをいろづけるんだ)

わたしを色付けるんだ

(とおくなってみうしなったちいさなあいを)

遠くなって見失った 小さな愛を

(もういちど、ねがってみてもいいかな)

もう一度、願ってみてもいいかな

(むかしみたいに、うたってみてもいいかな)

昔みたいに、歌ってみてもいいかな