ジェシカ

(からになってたんだかんこーひー)

空になってたんだ、缶珈琲

(てんてきつれてとうをはいかい)

点滴連れて棟を徘徊

(てをたたきこどもはぼくをゆびさしてわらい)

手をたたき子どもは僕を指さして笑い

(おんなのひとは)

女の人は、

(みちゃだめよっていってた)

「見ちゃダメよ」って言ってた

(よくはれたきんしゅうのこう)

よく晴れた錦秋の候

(しろいかべにてこりつむえん)

白い壁にて孤立無援

(ふとめをやると)

ふと目をやると、

(しょうじょはがーべらうでにかかえてさ)

少女はガーベラ腕に抱えてさ

(むいしきにぼくはかびんをと)

無意識に僕は花瓶を、と

(さかさまにゆかにおちた)

逆さまに床に落ちた

(あーじぇしかじぇしか)

あー、ジェシカジェシカ

(まさにがばなんす)

まさに、ガバナンス

(はがたたぬしんだんしょやぶりすて)

歯が立たぬ診断書破り捨て

(しょうかきひきずってあるくのぼくは)

消火器引きずって歩くの、僕は

(くるっちゃいないよ)

狂っちゃいないよ

(じぇしかじぇしかおうちにかえろ)

ジェシカジェシカお家に帰ろ

(おっとさいしゅうびんならまにあうかな)

おっと、最終便なら間に合うかな

(せかいきょうこうずつうめまいはつづく)

世界恐慌、頭痛・めまいは続く

(かりっぱなしだっただいほんばん)

借りっ放しだった代本板

(てんてきはりのあとひだりうで)

点滴針の跡、左腕

(いろあざやかなせびょうしをゆびでなぞる)

色鮮やかな背表紙を指でなぞる、

(なぞりながら)

なぞりながら

(くびかしげてがくせいはさった)

首かしげて学生は去った

(よくはれたしんりょくのこう)

よく晴れた新緑の候

(でんきこーなーでこぐんふんとう)

伝記コーナーで孤軍奮闘

(ふとめをやると)

ふと目をやると、

(きみはおもそうにずかんかかえてさ)

君は重そうに図鑑抱えてさ

(きゃたつにのったぼくはぐらりんり)

脚立に乗った僕はぐらりんり

(ばらんすをくずした)

バランスを崩した

(さーじぇしかじぇしか)

さー、ジェシカジェシカ

(ごらんながれぼし)

御覧、流れ星

(ひとごみにでられずとしょかんの)

人混みに出られず図書館の、

(いすのしたがたがたふるえるぼくは)

椅子の下ガタガタ震える僕は

(きちがいじゃないよ)

気違いじゃないよ

(じぇしかじぇしかきらりほっきょくてん)

ジェシカジェシカきらり、北極点

(でさいしゅうびんまだまにあうかな)

で、最終便まだ間に合うかな

(せかいきょうこうふみんみみなりやまぬ)

世界恐慌、不眠・耳鳴り止まぬ

(そうわかってんだ)

そう、わかってんだ、

(まともじゃないのはぼくなんだ)

まともじゃないのは僕なんだ

(すでにちりょうほうきかないんだ)

既に治療法効かないんだ、

(もとにもどれるのかな)

元に戻れるのかな？

(ほうたいといてぼくにのこったのが)

包帯解いて、僕に残ったのが、

(きもちわるいきずあとだけだったとしても)

気持ち悪い傷跡だけだったとしても、

(きみはわらってくれる)

君は笑ってくれる？

(あー)

あー、

(じぇしかじぇしかかんじゃなんだから)

ジェシカジェシカ患者なんだから

(もすこしていねいにあつかって)

も少し丁寧に扱って

(きみがだれかおもいだせそうなんだ)

君が誰か思い出せそうなんだ

(ぼくをわらってよ)

僕を笑ってよ

(とろんとしたひとみでみつめないで)

とろんとした瞳で見つめないで

(３４５でまほうにかけられた)

３，４，５で魔法にかけられた

(せかいきょうこうきみのなまえでしゅうしふ)

世界恐慌、君の名前で終止符