残像の愛し方

(いいのこしたことばがまだ)

言い残した言葉がまだ。

(ふれようとしたせなかがまだ)

触れようとした背中がまだ。

(そののうたんはゆらぎながらおをひいてひいて)

その濃淡は揺らぎながら尾を引いて、引いて、

(こびりついたまま)

こびりついたまま。

(ふろおけがうつしたぼくを)

風呂桶が映した僕を、

(すくいとってきょうをながしおとした)

掬い取って今日を流し落とした。

(まぶたのうらにこびりつくきみだけが)

瞼の裏にこびりつく君だけが、

(かわいたくらしのざんぞう)

乾いた暮らしの残像。

(あいしたかったんだいっさいがっさいをこのうでで)

愛したかったんだ、一切合切をこの腕で。

(もっともっとさっかくをこえて)

もっと、もっと、錯覚を越えて。

(かんちがいがまたげんじつをぬりかえる)

勘違いがまた、現実を塗り替える。

(そんなしゅんかんをずっと)

そんな瞬間をずっと。

(ぼくだけにちょうだい)

僕だけに頂戴。

(ふいにこぼしたためいきからさとらせあった)

不意に溢したため息から、悟らせ合った。

(つめたいせんそうのように)

冷たい戦争のように。

(あなたはかわった)

「あなたは変わった。」

(いいはなつきみはかたくめをとじたまま)

言い放つ君は、固く目を閉じたまま。

(ぼくとおなじように)

僕と同じ様に。

(わたしはだれ)

「私は誰？」

(うかれそがれてったじいしきだってそう)

浮かれ削がれてった自意識だってそう、

(いつかぼくがこがれのまれゆられてをのばしたじつぞうがあんだよ)

いつか僕が焦がれ呑まれ揺られ、手を伸ばした実像があんだよ。

(ねえざんぞう)

ねえ、残像。

(あきもせずうしろがみひいてそうらごんぐなったこーるどうぉーはおわりです)

飽きもせず後ろ髪引いて、そうらゴング鳴った、コールドウォーは終わりです！

(もうむっちゃくちゃになって)

もう、むっちゃくちゃになって！

(わすれたかったんだいっさいがっさいをそのままで)

忘れたかったんだ、一切合切をそのままで。

(もっともっとげいじゅつのように)

もっと、もっと、芸術のように。

(まねことばっかりだいつかはあいじょうもきっと)

真似事ばっかりだ、いつかは愛情もきっと。

(あさなぎにぼくはどこへながれつきたいんだ)

朝凪に僕は、どこへ流れ着きたいんだ。

(めをとじてそのままでぼくをあいしてよ)

目を閉じて、そのままで僕を愛してよ。

(めをとじてそのはざまでわらった)

目を閉じて、その狭間で笑った。

(あいしたかったんだずっと)

愛したかったんだ、ずっと。

(あいしたかったんだ)

愛したかったんだ。

(あいしたかったんだいっさいがっさいをこのままで)

愛したかったんだ、一切合切をこのままで。

(もっともっとさっかくをこえて)

もっと、もっと、錯覚を越えて。

(かんちがいがほらげんじつをぬりかえる)

勘違いがほら、現実を塗り替える。

(そんなしゅんかんをずっとあいしたかったんだ)

そんな瞬間をずっと、愛したかったんだ。

(いっさいがっさいはきみのてへ)

一切合切は君の手へ。

(こうもふこうもこうかいのさきで)

幸も、不幸も、後悔の先で。

(あいしかたなんかずっとまちがえつづけよう)

愛し方なんか、ずっと間違え続けよう。

(にくみあうようにおどりましょう)

憎み合うように踊りましょう！

(そんないっしゅんをいっしょう)

そんな一瞬を一生、

(あいしてゆくからさ)

愛してゆくからさ。