灯火/安月名莉子

(きみがいたばしょにひかりがおりる)

君がいた場所に光が降りる

(あしもとのかげものこさずはじけた)

足もとの影も残さずはじけた

(ふれたはずのえみぜんぶまぼろし)

触れたはずの笑み　ぜんぶ幻

(おとしたまぶたがすべてとかした)

落とした瞼がすべてとかした

(ぼくはなんてことをしてしまったんだろう)

僕はなんてことをしてしまったんだろう

(とまらないこどうをいまもさばけずにいる)

止まらない鼓動を今も裁けずにいる

(なんどつないでもときはもどらないや)

何度つないでも時は戻らないや

(それならふみだすの)

それなら踏み出すの

(きみをかえせかえせないんだもう)

君を返せ　返せないんだもう

(それぞれのいのちがはぐれずにいられることただねがったはずなのに)

それぞれの命がはぐれずにいられることただ願ったはずなのに

(でもたいせつなきずあと)

でもたいせつな傷跡

(またきみがのこしたともしびはゆれてぼくのみちをただてらすだろう)

また君が遺した灯火は揺れて僕の道をただ照らすだろう

(ともしびはゆれてぼくのみちをただてらすだろう)

灯火は揺れて僕の道をただ照らすだろう

(きりさいたまよいまぶたのうらにやきついたままだ)

切り裂いた迷い　瞼の裏に焼き付いたままだ

(なみだのありか)

涙の在り処

(からまったよりいとをほどきむすびなおそう)

絡まった縒糸をほどき結び直そう

(あたたかいきおくのざんぞうをおいかけていく)

暖かい記憶の残像を追いかけていく

(さあもうあるきだそう)

さあもう歩きだそう

(それはつみだとしてもあたらしいきぼう)

それは罪だとしても新しい希望

(きみをかえせかえせないんだもう)

君を返せ　返せないんだもう

(とどけられないことば)

届けられない言葉

(くりかえしてつらねてもあわいといきをたどり)

くりかえして連ねても淡い吐息を辿り

(てのなかにだいてくんだよ)

手のなかに抱いてくんだよ

(すりきれたもおもいは)

擦り切れたも思いは

(ともしびきえそうなよるのちいさなほのおにくべよう)

灯火消えそうな夜のちいさな炎に焚べよう

(ぜろはぜろそんざいはきえたけど)

ゼロはゼロ　存在は消えたけど

(ぼくのなかけせないまぼろしのほお)

僕のなか　消せない幻の頬

(きみをかえせかえせないんだもう)

君を返せ　返せないんだもう

(それぞれのいのちがはぐれずにいられることただねがったはずなのに)

それぞれの命がはぐれずにいられることただ願ったはずなのに

(でもたいせつなきずあと)

でもたいせつな傷跡

(またきみがのこしたともしびはゆれてぼくのみちをただてらすだろう)

また君が遺した灯火は揺れて僕の道をただ照らすだろう

(ともしびがゆれるぼくのにじんだいたみはつづくの)

灯火が揺れる　僕のにじんだ痛みは続くの

(くりかえしてつらねよう)

くりかえして連ねよう

(あしをすすめるために)

足を進めるために

(てのなかにだいてくんだよすりきれたおもいは)

手のなかに抱いてくんだよ　すりきれた思いは

(ともしびきえそうなよるもちいさなほのおにくべよう)

灯火消えそうな夜もちいさな炎に焚べよう

(ともしびがゆれるぼくのにじんだいたみはつづくの)

灯火が揺れる　僕のにじんだ痛みは続くの

(ともしびがきえないようむねにいのりいだくよ)

灯火が消えないよう　胸に祈り抱くよ