神楽

(あれもこれもそれもどれも)

あれも これも それも どれも

(みなみなしらんぷり)

皆 皆 知らん振り

(やはんにきみのわるいあやかしのこえ)

夜半に気味の悪い 妖の声

(おがくちなわましらのかおからだはむじな)

尾が蛇 の顔 体は狢

(そうかたりかたられかけるわたしのことを)

そう 語り騙られかける 私の事を

(うわさはくもにかわりひろがるおひれがつきひろがる)

噂は雲に変わり 広がる [尾鰭が付き 広がる]

(ひとをまもるかざりかみみてはみぬふりとうりゃんせ)

人を守る飾り神 見ては見ぬ振り とうりゃんせ

(ひとのくちるようみつめからからからわらう)

人の朽ちる様見つめ カラカラカラ 笑う

(ひろうかみにすてるかみこっからさきへいかしゃんせ)

拾う神に捨てる神 こっから先へ いかしゃんせ

(あかいつぼみとくとくとくとはなをさきかす)

紅い蕾 トクトクトクと花を咲かす

(ひとよいちやにひとりでそとをあるくなかれ)

人よ一夜に 一人で外を歩く無かれ

(ひとみごろとあやかしわらいをこぼす)

人見頃と 妖 笑いを零す

(ふきつなこえすがたはだれにもみせず)

不吉な声 姿は誰にも見せず

(よごとふすまごしえものをさだめる)

夜毎 襖越し 獲物を定める

(ここもそこもどこもだれも)

此処も 其処も 何処も 誰も

(かれもひとのゆくえしらず)

彼も 人の 行方知らず

(みやこをあばれめぐるらいじゅうのこえ)

都を暴れ巡る 雷獣の声

(おがくなわてあしはとらからだはいぬい)

尾が蛇 手足は虎 体は戌亥

(そうのろいまじないかけるわたしのじゅそを)

そう 呪い呪いかける 私の呪詛を

(くすりやきとうですらとどかぬ［まぼろしにはとどかない］)

薬や祈祷ですら 届かぬ 幻には届かない

(ゆみをかつぐもののふようわさあいてにゃとうりゃんせ)

弓を担ぐ武士よ 噂相手にゃ とうりゃんせ

(ひとのくやむさまみつめけたけたけたわらう)

人の悔やむ様見つめ ケタケタケタ 笑う

(ねらうあほいるあほとこよのみちをいかしゃんせ)

狙う阿呆 射る阿呆 常世の道を いかしゃんせ

(いけたたけにはらはらはらはらはなびがあがる)

活けた竹に ハラハラハラハラ 花火が上がる

(なけようぐいすなかずばくびをはらいおとすぞ)

泣けよ鶯 泣かずば 首を払い落とすぞ

(よろずのなかようらじょうにすみつく)

万の中 妖 羅城に住み着く

(ひともいぬもねこもとりも)

人も 犬も 猫も 鳥も

(そらもまちもかみがかくす)

空も 街も 神が隠す

(わらべのいのちいかしこいわれついにこわしれて)

童ノ命生カシ乞ワレ遂ニ壊レテ

(あやかしひとのいのちたたえとさげすみしころすもの)

妖人ノ命称エト貶シ殺スモノ

(たたらずたたえずいかさずころさず)

[祟らず 讃えず 生かさず 殺さず]

(あまぐもそらをおおくおおいうじんのしゃを)

雨雲空ヲ多ク覆ウ人ノ社ヲ

(にんぎょうぬえのいのちほえねらいうばえずに)

人形鵺ノ命捕エ狙イ奪エズニ

(とむらいわすれたむえんのはかにて)

[弔い 忘れた 無縁の墓にて]

(そらにわらいうつぐみのおと)

空ニ笑ウ鶫ノ音

(あやかしまとうかげ)

妖 纏う影

(いえをとびだすそこつものろうぜきするものゆるしゃせん)

[家を飛び出す粗忽者 狼藉する者 ゆるしゃせん]

(さびれたかざみどり)

寂れた風見鶏

(ひとのにげるようみつめけらけらけらわらう)

[人の逃げる様見つめ ケラケラケラ 笑う]

(そうつらいしあわせのせてわたしをはこぶ)

そう 辛い幸せ乗せて 私を運ぶ

(にげるにんげんおうわたしけっしていのちはとりゃあせん)

[逃げる人間 追う私 決して命は とりゃあせん]

(そのすがたはまるでみかくにん)

其の姿はまるで 未確認

(むきみのこえみかくにん)

[剥き身の声 未確認]

(おどろおどろおどろおどりましょう？)

おどろおどろおどろ踊りましょう？

(おどろおどろおどろおどろしく)

おどろおどろおどろおどろしく

(たえずさかずくちずかれず)

[絶えず 咲かず 朽ちず 枯れず]

(こわれわれわれやぶれる)

壊れ 割れ 我 破れる

(さめさめさめる)

醒め 褪め 冷める

(こいこいこいこがれ)

乞い 故意 恋 焦がれ

(ひとのあんぴしらず)

人の安否知らず

(おくるくるくるくるえ)

贈る 繰る 来る 狂え

(しめしめしめろ)

占め 閉め 絞めろ

(ひとひとひとひとり)

壱 人 他人 一人

(ぬえどりにさそわれやみよにきえる)

鵺鳥に誘われ 闇夜に消える