ゔるとぅーむ/藤原ハガネ

(ひとりきりくらがりにまよいこんだ)

独りきり暗がりに迷い込んだ

(はくじにかがやいたあいらびゅー)

白磁に輝いたアイラびゅー

(もりのおくかえりつくあばらのやね)

森の奥 帰り着く 肋の屋根

(ともすればげせんなからのはこ)

ともすれば下賤な空の箱

(あまくあたたかくぐしゃりとにこんだ)

甘く暖かく、ぐしゃりと煮込んだ

(りんごのじゃむはどくいりらしい)

林檎のジャムは毒入りらしい

(どうぞひびかせてあいをあいを)

どうぞ響かせて 哀を哀を！

(このぼくにはきこえぬように)

この僕には聞こえぬように

(もっとひびかせてあいをあいを)

「もっと響かせて 愛を愛を！」

(はやしたてるこのほしで)

生やし建てるこの惑星で

(あいぞうもじょうよくもぜつぼうもうたったのは)

愛憎も情欲も絶望も歌ったのは

(だれかのぷりんせす)

誰かのプリンセス

(とおくいろあせてさいたあいだ)

遠く色褪せて裂いた間

(ききとれないきみのうた)

聞き取れない君の歌

(たがやされうるおったこのばしょには)

耕され潤ったこの場所には

(すでにうえるさたもないようで)

既に植える沙汰も無いようで

(じゅうにじのまほうがとけたあとには)

十二時の魔法が解けた跡には

(つくものことわりがかきかえた)

九十九の理が書き換えた

(おしろにむかってすすむそのさなか)

お城に向かって進むその最中

(かぼちゃのばしゃがくさりおちて)

カボチャの馬車が腐り落ちて

(どうぞかぶらせてはいをはいを)

どうぞ被らせて　灰を灰を！

(もういちどをささげるように)

もう一度を捧げるように

(もうたかぶらせてあいをあいを)

「もう昂らせて 愛を愛を！」

(さわぎたてるこのほしで)

騒ぎ立てるこの惑星で

(きょうしんもはいねつもえんざんも)

狂信も排熱も演算も

(うたったころがなつかしくて)

歌った頃が懐かしくて

(りょうのてのひらをさいたあいだ)

両の掌を裂いた間

(こぼれおちるあすとれあ)

零れ落ちるアストレア

(おちたそのきょうきのりゆうたずさえて)

堕ちたその狂気の理由携えて

(もういちどきみとおどれたなら)

もう一度君と躍れたなら

(どうかひびかせてあいのあいを)

どうか響かせてアイの愛を！

(このすべてにきこえるように)

このすべてに聞こえるように

(もっとひびかせてあいのあいを)

もっと響かせて愛のアイを！

(あかくもえるこのほしで)

赤く燃えるこの惑星で

(げきじょうのべきじょうをぬりこえて)

激情の冪乗を塗り越えて

(たいたひをささげろでぃすぷれい)

焚いた火を捧げろディスプレイ

(とおくすぎさったようなしんわ)

遠く過ぎ去ったような神話

(まほうはもういらないわ)

魔法はもう要らないわ！

(あいぞうもじょうよくもぜつぼうもぜんぶ)

愛憎も情欲も絶望も全部

(きみのためだぷりんせす)

君の為だプリンセス

(そっといろづいてさいたあいだ)

そっと色づいて咲いた間

(きかせてくれきみのうた)

聴かせてくれ君の歌