意味怖15

(まいとしきまぐれにでてきては)

毎年気まぐれに出てきては

(ねがいごとのうちのひとつをかなえることにしておるんじゃ)

願い事のうちの一つを叶えることにしておるんじゃ

(おまえのたんざくがちょうど１００まいめじゃったから)

お前の短冊がちょうど100枚目じゃったから

(ことしはおまえのねがいごとをかなえることにしようぞ」)

今年はお前の願い事を叶えることにしようぞ」

(はあ？かみさまとかうさんくせー。)

はあ？神様とかうさんくせー。

(しかも、こんなわるいねがいごとかなえちゃっていいわけ？)

しかも、こんな悪い願い事叶えちゃっていいわけ？

(「わしはきまぐれなんじゃ。ふぉっふぉっふぉっ」)

「ワシは気まぐれなんじゃ。ふぉっふぉっふぉっ」

(まじかよ・・・かみさまっつーよりあくまじゃねーかこれ・・・)

マジかよ…神様っつーより悪魔じゃねーかこれ…

(まあいいや、どうせここにあるねがいごとくだらねーのばっかだからな。)

まあいいや、どうせここにある願い事くだらねーのばっかだからな。

(「いまから１０ぷんかけておまえのねがいごとをかなえていくぞ)

「今から10分かけてお前の願い事を叶えていくぞ

(そのあいだにもういちどここにあるたんざくをよみかえすがいい)

その間にもう一度ここにある短冊を読み返すがいい

(やっぱりねがいごとをかなえないでくれ！ということであれば)

やっぱり願い事を叶えないでくれ！ということであれば

(１０ぷんいないにわしをとめることじゃ)

10分以内にワシを止めることじゃ

(１０ぷんたったあとではどうにもできんからな)

10分経った後ではどうにもできんからな

(さあいくぞ」)

さあ行くぞ」

(こりゃがきのじだな・・・)

こりゃガキの字だな…

(「ぷりきゅあになれますように」だと？わらっちまうぜ。)

「ぷりきゅあになれますように」だと？笑っちまうぜ。

(「ａａこうこうにごうかく！」ねがいごとしてるひまがあったらべんきょうしてろっつの。)

「aa高校に合格！」願い事してる暇があったら勉強してろっつの。

(「ｂｂがほしい！」そりゃささじゃなくてくりすますつりー)

「bbが欲しい！」そりゃ笹じゃなくてクリスマスツリー

(につるさなきゃだめだ。)

に吊るさなきゃダメだ。

(「こづかい１００００えんあっぷしてほしい！」)

「小遣い10000円アップしてほしい！」

(ふけいきだからなんともな。)

不景気だからなんともな。

(「ａきみとこれからもずーっとらぶらぶでいられますように」)

「A君とこれからもずーっとラブラブでいられますように」

(りあじゅうばくはつし)

リア充爆発し

(「せかいせいふく」うおっじゃねーよ)

「世界征服」うおっじゃねーよ

(こんなねがいかなえてたまるか)

こんな願い叶えてたまるか

(あー、かみさまのじいさん、いいよ)

あー、神様のじいさん、いいよ

(おれのねがいごとかなえちゃって)

俺の願い事叶えちゃって

(ここにかいてあるねがいごと)

ここに書いてある願い事

(しょーもねーのばっかだもん。)

しょーもねーのばっかだもん。

(と、そろそろ１０ぷんというときに)

と、そろそろ10分という時に

(おれはさいごにこまかいじでびっしりとうめつくされたたんざくにめをとめた)

俺は最後に細かい字でビッシリと埋め尽くされた短冊に目を留めた

(そこには、)

そこには、

(「このよからじこやさつじんがなくなりますように)

「この世から事故や殺人がなくなりますように

(もうだれもじこでしんだり)

もう誰も事故で死んだり

(ひとにころされたりしませんように)

人に殺されたりしませんように

(もうだれも、かなしまないように)

もう誰も、悲しまないように

(もうだれも、くるしまないように)

もう誰も、苦しまないように

(もうだれも、きずつかないように・・・」)

もう誰も、傷つかないように…」

(おれはぼーっとそのねがいごとをみつめてしまい)

俺はボーッとその願い事を見つめてしまい

(きがついたら１０ぷんがけいかしてしまっていた)

気がついたら10分が経過してしまっていた

(このひつうなねがいごとがかなったほうがよかったのかもしれないな。)

この悲痛な願い事が叶った方がよかったのかもしれないな。

(まあ、ておくれだけど。)

まあ、手遅れだけど。

(おれはじぶんのかいたねがいごとをちょっぴりだけこうかいしたが)

俺は自分の書いた願い事をちょっぴりだけ後悔したが

(このよなんてそんなものだ)

この世なんてそんなものだ

(じこもある、さつじんもある)

事故もある、殺人もある

(「さて、ではわしはそろそろかえるとするかのまたらいねん！」)

「さて、ではワシはそろそろ帰るとするかのまた来年！」

(そういって、かみさまとなのるおとこはきえていった。)

そう言って、神様と名乗る男は消えていった。

(ま、たかだか１００にんのねがいごとがかなわなかったくらいで)

ま、たかだか100人の願い事が叶わなかったくらいで

(てんぺんちいがおこるわけじゃねーやな)

天変地異が起こるわけじゃねーやな

(そもそも、ねがいごとなんてきやすめだしよ)

そもそも、願い事なんて気休めだしよ

(おれはきびすをかえし、じたくへとむかった。)

俺はきびすを返し、自宅へと向かった。

(そのとき、じりりーん！じりりーん！)

そのとき、ジリリーン！ジリリーン！

(あ、おれのけいたいでんわのちゃくしんおんくろでんわなんだよね)

あ、俺の携帯電話の着信音黒電話なんだよね

(これつかってるやついる？)

これ使ってる奴いる？

(だれだろう)

誰だろう

(だちか？)

ダチか？

(あちげえおふくろじゃん)

あちげえお袋じゃん

(うわっ、やっべ、もうよるの７じか)

うわっ、やっべ、もう夜の7時か

(いそいでかえんねーとまたおおめだまくらっちまう)

急いで帰んねーとまた大目玉くらっちまう

(ぴっ)

ピッ

(「もしもし？おふくろ？おれいまからいそいでかえっからさ)

「もしもし？おふくろ？俺今から急いで帰っからさ

(ゆうはんぬきはかんべんしてくれよな・・・・・・・・・えっもしもしーおふくろー」)

夕飯抜きは勘弁してくれよな………えっもしもしーおふくろー」