劇場

(とうきょうじゅうでいわっている)

東京中で祝っている

(やじうまでなしとげたいぎょうのかずかずを)

野次馬で成し遂げた偉業の数々を

(しょうこんじょうでねむっている)

招魂場で眠っている

(ぼくはとうみょうにはめもくれずに)

僕は灯明には目もくれずに

(はれわたるにほんばしがたばしゃもんくたれながし)

晴れ渡る　日本橋　ガタ馬車　文句垂れ流し

(いたいいたいひざしをさけほろのさまでみる)

痛い　痛い　日差しを避け　幌の狭間で見る

(かこもみらいもいみはないのに)

過去も未来も　意味は無いのに

(それでもとらわれているいやになるんだ)

それでも囚われている　嫌になるんだ

(ただかみかぜよふけこのげきじょうが)

ただ　神風よ吹け　この劇場が

(くずれおちていくああそのまえに)

崩れ落ちていく　嗚呼　その前に

(わんしゃががいろたむろす)

腕車が街路屯す

(ひどくこうけいきにめいていのまちを)

ひどく好景気に酩酊の街を

(けんかといえばやらいでか)

喧嘩と言えばやらいでか

(ましてこんとんなるぶんかがまざれば)

増して混沌なる文化が混ざれば

(とうきょうじゅうがいわうのさ)

東京中が祝うのさ

(ひどくいろめきたつこのいじょうなひび)

ひどく色めき立つ　この異常な日々

(けいてきひとつならない)

警笛ひとつ鳴らない

(ぼくはほうどうにはめもくれない)

僕は報道には目もくれない

(あめがふるこうじまちいきなこうかきょうがきしみ)

雨が降る　麹町　いきな高架橋が　軋み

(ひくいひくいじなりのおとみながくずおれる)

低い　低い　地鳴りの音　皆が頽れる

(ひとのことばにかせはないのに)

人の言葉に　枷は無いのに

(それでもとらわれているあきれちゃうよな)

それでも囚われている　呆れちゃうよな

(ただかみさまがいたあのげきじょうは)

ただ　神様がいた　あの劇場は

(いまじゃくちはててああやけのはら)

今じゃ朽ち果てて　嗚呼　焼け野原

(さあだいだんえんそんなひがくれば)

さあ大団円　そんな日が来れば

(きっとたのしくてまいにちがかがやくの)

きっと楽しくて　毎日が輝くの

(くもかげるかんだがわてつどうゆがむおちゃのみず)

雲陰る　神田川　鉄道歪む　御茶ノ水

(えらいえらいあこがれのがいせんもんをうがて)

偉い　偉い　憧れの　凱旋門を穿て

(ぼくのことばにいみはないのさ)

「僕の言葉に意味は無いのさ」

(ごめんねだましたんだいとはせずとも)

「ごめんね騙したんだ，意図はせずとも」

(ただぼくのことばにかせはないのさ)

ただ　僕の言葉に　枷は無いのさ

(やけてくちていくさあにげだして)

焼けて朽ちていく　さあ　逃げ出して！

(かこもみらいもいみはないのに)

過去も未来も　意味は無いのに

(それでもとらわれているいやになるんだ)

それでも囚われている　嫌になるんだ

(ただかみかぜをまつせなかをおして)

ただ　神風を待つ　背中を押して

(ついぞふかぬままああやけのはら)

終ぞ　吹かぬまま　嗚呼　焼け野原