キマツテスト

(あんらくしおうようです)

『安楽死　応用』です。

(せんせいとわたしだけ)

先生と私だけ。

(さっさとこんなもんだいおわらせましょう)

さっさとこんな問題終わらせましょう。

(じかんもったいないです)

時間もったいないです。

(かんたんなもんだいです)

簡単な問題です。

(かんたんにとけてしまうもんだいです)

簡単に解けてしまう問題です。

(かってにはしりだすぺんをながめています)

勝手に走り出すペンを眺めています。

(わたしのめはながめています)

私の眼は眺めています。

(わたしだめなこでした)

私、ダメな子でした。

(さいていなこでした)

最低な子でした。

(いきてることがひとをいらつかせました)

生きてることが人をイラつかせました。

(それはそれはこっけいでおろかなもんでした)

それはそれは滑稽で、愚かなもんでした。

(かげぐちがみみにいるまできづきませんでした)

陰口が耳に入るまで気付きませんでした。

(それはあるひのことでした)

それはある日のことでした。

(よびとめられました)

呼び止められました。

(これうけてみたらとせんせいにもちかけられました)

「これ、受けてみたら」と先生に持ち掛けられました。

(それをことわるすじあいもくつがえすじしんも)

それを断る筋合いも、覆す自信も、

(けっきょくどこをさがしてもまったくみつけることができませんでした)

結局、どこを探しても全く見つけることができませんでした。

(さいしゅうせつもんとうらい)

最終設問到来。

(これさえとければわたしもはれてごうかく)

これさえ解ければ私も晴れて合格。

(さっさとこんなもんだいおわらせましょう)

さっさとこんな問題終わらせましょう。

(みなまちわびています)

皆待ちわびています。

(ごきぶりのようないっしょうをとおしてたくさんべんきょうしてきたもの)

ゴキブリのような一生を通して、たくさん勉強してきたもの。

(さいごだろうがなんだろうがこんなのもかんたんです)

最後だろうが難だろうが、こんなのも簡単です。

(とまらないぺんをながめています)

止まらないペンを眺めています。

(わたしのめはながめています)

私の眼は眺めています。

(しけんしゅうりょうまでながめています)

試験終了まで眺めています。

(わたしだめなこでした)

私、ダメな子でした。

(さいていなこでした)

最低な子でした。

(ほんとにほんとにだめなこでした)

ほんとにほんとに、ダメな子でした。

(だから)

だから。

(わたしごうかくてんでした)

私、合格点でした。

(さいこうてんでした)

最高点でした。

(せんせいはとてもうれしそうでした)

先生はとても嬉しそうでした。

(あたまをぽんぽんとなでてくれました)

頭をポンポンと撫でてくれました。

(はりつけたえがおでせいだいにいわってくれました)

貼りつけた笑顔で盛大に祝ってくれました。

(てをとってつれていかれました)

手を取って連れていかれました。

(はなうたまじりでした)

鼻唄交じりでした。

(ひょうしょうしきはたいいくかんでやるそうです)

表彰式は体育館でやるそうです。

(しかくくきりとられたそらがよごれたこのそらが)

四角く切り取られた空が、汚れたこの空が、

(こんなきれいにみえたのははじめてのことでした)

こんな綺麗に見えたのは初めてのことでした。