失想ワアド

(かがみのなかからおはようあさだね)

鏡の中から「おはよう、朝だね」

(いつもどおりひょうじょうはさいあく)

いつも通り　表情は最悪

(ぎこちないえがおもねぐせもしぐさも)

ぎこちない笑顔も　寝癖も　仕草も

(なにもかもいやになるなぁ)

何もかも　嫌になるなぁ

(りふじんだな)

理不尽だな

(つたえたいことならひとなみにあるけど)

伝えたいことなら　人並みにあるけど

(なにひとつもことばにかわらない)

何一つも　言葉に変わらない

(うつむきかげんにきょうもくちごもる)

俯き加減に　今日も口籠る

(あいさつもできないんだね)

「挨拶もできないんだね」

(かわいそう)

「かわいそう」

(にわのはなみずきはきれいで)

庭のハナミズキは綺麗で

(ただうらやましくてみていた)

ただ羨ましくて見ていた

(それにひきかえたならわたしは)

それに引き換えたなら　私は

(ほんとうだめなこだ)

本当、ダメな子だ

(このままいなくなれたら)

このままいなくなれたら

(ふしぎなことにこのせかいは)

不思議なことに　この世界は

(ふつうなことがむずかしくて)

「普通なこと」が難しくて

(ことばひとつもかえせないのが)

言葉一つも返せないのが

(ばからしくってないている)

バカらしくって泣いている

(めくるめくようなかんちがいを)

めくるめくような勘違いを

(くりかえしてきらいになった)

繰り返して嫌いになった

(つぼみのままでかれてく)

つぼみのままで枯れてく

(みらいにことばがみつからない)

未来に言葉が　見つからない

(こわがったようなへんなかお)

怖がったような変な顔

(にげちゃうくせだめだだめだ)

逃げちゃうクセ　ダメだ、ダメだ

(はずかしくてくちをつぐむ)

恥ずかしくて　口を噤む

(ほんとういやになるなぁ)

ほんとう、嫌になるなぁ

(りんとさいたこえでわらえるひとがいて)

凛と咲いた声で　笑える人がいて

(はなのようなことばをかわす)

花のような言葉を交わす

(かがみのなかからとたんにせめるこえ)

鏡の中から途端に責める声

(わたしにはできないんだよ)

「・・・私にはできないんだよ」

(ごめんね)

「ごめんね」

(それはえにかいたようなせかいで)

それは絵に描いたような世界で

(ただうらやましくてみていた)

ただ羨ましくて見ていた

(じゃまにならないようにわたしは)

邪魔にならないように　私は

(わたしはどうしよう)

私はどうしよう

(なくしたいなくせないあぁ)

失くしたい　失くせない　あぁ

(あふれだしたじぶんじしんは)

溢れ出した自分自身は

(ひどくみじめできたなくって)

ひどく惨めで汚くって

(だれにもしられないようにって)

誰にも知られないようにって

(へやのすみでないている)

部屋の隅で泣いている

(なくさなくてもだいじょうぶって)

「失くさなくても大丈夫」って

(ふいにこえがみみにとどいた)

不意に声が　耳に届いた

(まほうみたいなひびきに)

魔法みたいな響きに

(なぜだかことばがみつからない)

なぜだか言葉が見つからない

(こわがってないでこえにしよう)

怖がってないで　声にしよう

(いいたいことはなせはなせ)

言いたいこと「話せ、話せ」

(まちがったようなこえがでた)

間違ったような「泣声」が出た

(ほんとうばかだよなぁ)

ほんとう、バカだよなぁ

(たどりついたのはみらいで)

たどり着いたのは「未来」で

(そういろめくようなせかいで)

そう、色めくような世界で

(おとなになっていくわたしは)

大人になっていく　私は

(かわりつづけていく)

変わり続けていく

(かわらないおもいを)

変わらない想いを

(だいじにいだいていく)

大事に抱いていく

(ふしぎなほどにこのせかいは)

不思議なほどに　この世界は

(おもいだすのがむずかしくて)

「思い出す」のが難しくて

(わすれたくないことばを)

忘れたくない言葉を

(なくさないようにつたえていく)

失くさないように伝えて行く

(いつかだれかとこのせかいで)

いつか誰かとこの世界で

(わらいあえたらちょうどいいなぁ)

笑い合えたら　ちょうど良いなぁ

(そんなことをかんがえる)

そんなことを考える

(みらいにりゆうがみつかりそう)

未来に理由が見つかりそう

(ねぐせなおしてそとにでよう)

寝癖、直して外に出よう

(きょうもまたいちりんはえる)

今日もまた一輪、映える

(かがみのなかさいたはなに)

鏡の中　咲いた花に

(おはようをかえしたら)

「おはよう」を返したら