花鳥風月

(おぼつかないあしどりだって いくやほどむかしだろうと)

おぼつかない足取りだって 幾夜ほど昔だろうと

(いとしくおぼえてしまった うんめいはかくもあるか)

愛しく覚えてしまった 運命は斯くも在るか

(いつまでもいつまでもと そでをひくゆうまぐれに)

いつまでも いつまでもと 袖を引く夕間暮れに

(かぜそよぐかみとまだなれぬおしろい)

風そよぐ髪と　まだ慣れぬ白粉

(きずつくほどにあいぶしよう わすれないように)

傷つくほどに愛撫しよう 忘れないように

(このゆびさきでふたりを かきのこすほどにつよくさわりたい)

この指先でふたりを 書き残すほどに　強く触りたい

(きみがのぞむのであればおれはうんめいにあらがおう)

「君が望むのであれば俺は運命に抗おう」

(こよいよるがあけずともきみのそばにいたいんだ)

今宵夜が明けずとも 君の傍に居たいんだ

(このよではゆるされぬおうせとちぎり)

この世では許されぬ　逢瀬と契り

(あいをあいとみまちがわぬように あかしつくすつきかげよ)

愛を哀と見間違わぬように 明かし尽くす月影よ

(たまゆらないのちをいまてらしておくれよ)

玉響な命を今　照らしておくれよ

(ときがつれこむはよると しずけさとまどろむおんど)

時が連れ込むは夜と 静けさと微睡む温度

(かぜふけばおちてしまう さながらはなびらのように)

風吹けば落ちてしまう 宛ら花びらのように

(すれちがうひとにまみれそらめしたかなたのゆめ)

すれ違う人に塗れ　空目した彼方の夢

(かきわけるかみになつかしきおもかげ)

掻き分ける髪に　懐かしき面影

(せかいじゅうがきみのうんめいをくるわそうとした)

世界中が君の運命を　狂わそうとした

(うたかたのようにはじけたしたさきむすぶこいとこころね)

泡沫のようにはじけた　舌先結ぶ恋と心音

(なになきゆうがでだいじょうぶちやおれはおまんのことあいしちゅうよ)

「なに泣きゆうがで、大丈夫ちや。 俺はお前のこと愛しちゅうよ」

(ぬれるはごろものはだと じゅくしきらぬそのはなの)

濡れる羽衣の肌と 熟しきらぬその花の

(さんみまであいするよおおせのままに)

酸味まで愛するよ　仰せのままに

(そのみいつかうきぐもとなりて くれるしののめのそらへ)

その身いつか浮雲となりて 暮れる東雲の空へ

(たゆたうならつばさをえてついばみにいきたい)

揺蕩うなら翼を得て　啄ばみにいきたい

(こよいよるがあけずともきみのそばにいたいんだ)

今宵夜が明けずとも　君の傍にいたいんだ

(このよではゆるされぬおうせとちぎり)

この世では許されぬ　逢瀬と契り

(あいをあいとみまちがわぬように あかしつくすつきかげよ)

愛を哀と見間違わぬように 明かし尽くす月影よ

(たまゆらないのちをいまてらしておくれよ)

玉響な命を今　照らしておくれよ